KEKら,高速起動/低消費電力の水晶発振回路を開発

高エネルギー加速器研究機構(KEK)と東京工業大学は共同で,高速起動と低電力を同時に実現する水晶発振回路の開発に成功した(ニュースリリース)。

電子機器の中には正確な動作の基準となる電気信号を作り出すための水晶振動子,水晶発振器が活躍している。今回,水晶発振回路に工夫を施すことで,その起動時間を大幅に短縮化し,低エネルギー消費を実現した。主に電源のオン,オフを繰り返して周波数を維持する通信分野で,社会的に大きなインパクトを発揮するという。

水晶発振回路は,最小線幅65nmのシリコンCMOSプロセスで試作。発振回路の増幅器を再構成可能な多段増幅器とし,26MHzおよび40MHzで発振させたところ,40MHz発振時には64µsで高速起動することを確認した。これは,これまでに報告された同じ発振周波数の水晶発振回路の半分以下の起動時間となる。

水晶発振回路を無線機やシステムクロックなどの信号として使う際,非動作時には省エネのため各回路の電源をオフにして運用する。従来の水晶発振回路は電源オン後に発振が安定するまでに数ミリ秒かかり,無駄な電力を消費していたが,今回開発に成功した水晶発振回路は,起動時間を短くすることで,起動にかかる消費エネルギーを大幅に減らすことが可能。

水晶発振回路はあらゆるものをインターネットでつなげるIoT機器に欠かせない部品として知られているが,近い将来,IoT機器のノード数が世界中で1兆個を超えると予測されており,その低電力動作を可能とする開発成果は,社会的に大きなインパクトを生むことが予想されるとしている。

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