矢野経済研究所は,2018年度の偏光板及び部材フィルム世界市場を調査し,製品セグメント別の動向,将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。
偏光板は主にTFT-LCDやOLEDパネル向けに使用され,2017年度の偏光板全体市場のうちTFT向け偏光板は約98%を占める。そのほかTN-LCD向け・STN-LCD向けにも使用される。
TFT-LCDやOLEDパネルは,LCD TVのほかにモニターやノートブックPC,スマートフォン,タブレットPCなどの中小型モバイル機器の主要パネルとして使用され,これらの用途向けに様々なタイプの偏光板が採用されている。
2017年度における偏光板全体の世界生産量は約4.9億m2(前年度比2.6%増),うちTFT向け偏光板の世界生産量は約4.8億m2(同2.8%増)だった。
PCやスマートフォンなどIT関連向け物量が伸びなかったうえ,2017年はVA方式を中心にTVパネルの販売が伸び悩んだことで,台湾パネルメーカーでは2017年末時点でTV用パネルの在庫を抱えている状況だった。なお,韓国大手ディスプレイメーカーのSDC(Samsung Display)の韓国LCD生産ラインの稼働中止の影響は2017年まで響いたという。
注目トピックスである位相差フィルムの動向を見ると,VA方式の位相差フィルムでのCOPフィルム採用の決め手は「低透湿による水ムラの抑制」と「高透湿が引き起こすベンディングによる色ムラの改善」であったが,現在は同条件を満たす改良版TACフィルムの登場や既存TAC系材料の補完材としてPETフィルムやPMMAフィルムを組み合わせた新規の偏光板構造も採用が本格化している。また,VA方式TV向け位相差フィルム市場では多様化する偏光板構造に伴いTAC系,COP系フィルムの出荷動向が変動しているという。
大型IPS方式の位相差フィルム市場では,TAC系ゼロ位相差フィルムが主流であったが,2015年よりLGD(LG Display)やBOE(Zhejiang BOE Display Technology)において,TVパネル向けでPMMA系ゼロ位相差フィルムの使用が本格化したほか,2017年よりIPS方式TV向けでPMMA系位相差フィルム市場が急成長しているとする。
2018年度には,偏光板全体の世界生産量は5億m2を越える見込み。中国パネルメーカーの新規LCD生産ラインの稼働が本格化したことで,中国パネルメーカーで生産されるTV画面のインチサイズ拡大が偏光板生産量の大きな支えとなり,成長が続く見通しだとしている。
偏光板全体の世界生産量のうち,TV向けが占める割合は年々拡大している。世界のLCD TVの画面サイズは40″以上がスタンダード化し,「32″TV離れ」はさらに加速化している。2015年より中国パネルメーカーでも主力インチは32″から40″以上へとサイズ拡大が進んでいることで,TV向け出荷量が偏光板世界市場を牽引していくと予測する。