大阪産業大学,国立天文台らの国際研究グループは,アルマ望遠鏡を使って非常に遠方にある銀河MACS1149-JD1を観測し,この銀河が地球から132.8億光年の距離にあることと,この銀河に酸素が含まれていることを発見した(ニュースリリース)。
宇宙は138億年前にビッグバンで生まれ,そのあと数億年が経過したころに最初の銀河が誕生したと考えられている。しかしそれが具体的にはいつ頃で,銀河はどのようにして成長してきたのかは,現代天文学における大きな謎のひとつとなっている。
過去の宇宙の様子は遠くの天体を観測することでそのようすを垣間見ることができる。遠くの天体から光が届くには時間がかかるため,宇宙のはるか彼方にある天体からの光を観測することは,その天体の昔の姿を見ていることに相当する。
こうした宇宙初期の銀河のようすを調べるため,研究グループは,ハッブル宇宙望遠鏡で発見された遠方銀河MACS1149-JD1を,アルマ望遠鏡で観測した。観測では,この銀河に含まれるであろう酸素イオンが出す波長88μmの赤外線を狙った。
アルマ望遠鏡による観測の結果,宇宙の膨張によって大きく引き伸ばされたこの赤外線が波長893μmの電波となって観測された。この波長の伸びから,この銀河が地球から132.8億光年 の距離にあることが判明した。
ハッブル宇宙望遠鏡によるカラーフィルタでの距離測定ではおおまかな数値しか導き出すことができなかったが,アルマ望遠鏡の高い感度と分光性能を活かして距離を精密に求めることに成功した。
さらに,欧州南天天文台の可視光赤外線望遠鏡Very Large Telescope(VLT)を用いた観測で水素原子が出す紫外線の検出にも成功し,そこから求められた距離はアルマ望遠鏡で得られた距離と良い一致を示した。これらにより,MACS1149-JD1は精密に距離が求められた銀河としてはこれまでで最も遠いものとなった。