沖縄科学技術大学院大学(OIST)は,安定性とエネルギーの変換効率面で優れ,しかも比較的安価な新型ペロブスカイト材料を使用した太陽電池を開発した(ニュースリリース)。
ペロブスカイト構造の材料は,太陽電池に革命を起こす潜在能力を持つが,ペロブスカイトは非常に不安定になることも多く,また熱に曝されると劣化してしまうため,商業化への道が困難という重大な欠点がある。
今回開発した材料には,以下の特徴がある。まず,完全に無機物で作製されているという点。有機物でできた構造は通常,熱に対する安定性がなく,熱により劣化してしまう。太陽電池は太陽光の下で非常に高温になることがあり,熱に対する安定性は決定的な要素となる。今回研究グループは有機材料を無機材料に置き換えることにより,ペロブスカイト太陽電池を太陽光に300時間曝された後でもほとんど変化しない安定的なものにすることに成功した。
しかしながらこの無機物からなるペロブスカイト太陽電池は,有機物と無機物のハイブリッドのタイプよりも,光吸収率が低い傾向がある。そこで研究グループは,この新型ペロブスカイト太陽電池に性能を向上させるため,マンガンを加えることを試みた。マンガンは材料の結晶構造に変化をもたらし,集光能力を高める働きがある。
さらに,この新型太陽電池においては,太陽電池から外部ワイヤへ電流を輸送する電極に通常の金ではなく,炭素を用いた。炭素の電極は,太陽電池の上に直接焼き付けが可能であり,安価で製造も容易。一方,金の電極を製造するには,高温下において真空槽等の特別な装置が必要となる。
研究グループはでは今後,ペロブスカイト型太陽電池をシリコン太陽電池のように商業化するには,例えば,寿命がシリコン太陽電池が20年なのに対し,ペロブスカイト太陽電池は1~2年程度であるように,克服すべき多くの課題があるとし,効率と耐久性を改善し,実用化及び将来的な量産に向けた工程を開発するとしている。