白銅,東京理科大学,キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は,金属3Dプリンターの造形材料を共同で研究し,JIS規格のアルミダイキャスト材料である「ADC12」の造形レシピの開発に成功した(ニュースリリース)。白銅は,「ADC12」による造形サービスを2018年4月より開始する。
現在,金属3Dプリンターで造形が可能な材料の多くは,欧米のプリンターメーカーが標準材料として提供している欧米市場向けの材料に限定されている。これらの標準材料は,日本の製造業では馴染みの無いものも多数あり,材料の制限が金属3Dプリンターの活用を検討する際の最初のハードルとなっていた。
研究グループは,2017年3月から米国3D Systemsの金属3Dプリンター「ProX DMP 200」を活用し,国内製造業で広く利用されているJIS規格に準じたアルミ合金の共同開発を進めてきた。
日本の多くの製造業に親和性の高い材質での造形が,金属3Dプリンター活用の第一歩との考えから,国内でアルミ製品として最も需要の高い「ADC12」の造形パラメーターの開発に着手し,約10か月をかけて開発に成功した。今回実現した「ADC12」造形物は,強さやしなやかさなど,バルク材を上回る機械特性を有している。そのため,新たな用途向けの部品開発や製品への活用に期待が持てるという。
開発では,白銅は金属3Dプリンターの受託製造を通じて,マーケットのニーズを調査した。今後,「ADC12」による造形サービスを通じて,自動車業界を中心に,半導体製造装置業界やロボット業界,各種産業機械業界に拡販を目指す。
東京理科大は,まだ歴史の浅い金属3Dプリンター技術について,必要となる学術ならびに技術的知見を蓄積・体系化するべく,産業界と連携しつつ基礎から応用までの幅広い研究開発に取り組んでいる。3台のプリンターを用途別に運用し,標準材料にはない実用的な素材およびそのプロセス技術の開発を推進している。
また,金属3Dプリンターの特長を生かした機械設計技術についても研究している。金属3Dプリンターの産業界への普及に貢献すべく,産学連携拠点としての活動を展開していく。
キヤノンMJは,今回の研究に使用する機材やそのノウハウの提供,エンジニアの派遣を行なった。今後も3Dプリンターに関する技術や関連ソリューションに対する見識を深め,自社エンジニアの育成,顧客への提案領域の拡大を行なう。装置販売やソリューション提案だけでなく,納入後の密な技術サポートとフィールドサービスを強みに,産業用3Dプリンター市場の拡大に貢献していくとしている。