新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクトの成果をもとに,島津製作所は,世界最高クラスの高出力・高輝度青色半導体レーザーを製品化する(ニュースリリース)。
青色半導体レーザーは,金属に対する吸収効率が高く,従来の赤外半導体レーザーでは加工が困難だった金や銅などの加工に適しているため,金属加工用次世代レーザー加工機の光源への応用が期待されている。しかし,これまで青色半導体レーザーの用途は,高出力化と高輝度化を課題としており,本格的な金属加工への利用はまだ進んでいない。
そこで,NEDOプロジェクトにおいて,島津製作所と大阪大学は,日亜化学工業の協力のもと,金属加工用レーザー加工機の光源として応用可能な高出力かつ高輝度な青色半導体レーザーを実現するための研究開発を進めている。2017年10月24日には,世界で初めて青色半導体レーザーの高輝度化により,純銅を積層造形できる3Dプリンターを実現した。
このレーザーは多数のレーザー素子からの光を合成してコア径100μmの細径ファイバーに集約することで,同径においてこれまでの青色半導体レーザーでは実現できていなかった世界最高クラスの高出力(100W)かつ高輝度(1.3×106W/㎠)を達成した。一般に,金属表面を十分に溶融させるには1.0×106W/㎠以上の輝度が必要とされるのに対し,このレーザーはこれを上回る輝度を達成した。
これは従来の青色半導体レーザー製品に対して5倍の出力と輝度を達成しており,青色半導体レーザーによる本格的な金属のレーザー加工が可能になる。レーザーを照射して表面を溶融する熱伝導溶接,レーザーマーキング,3Dプリンターでの積層向けの光源などとしての使用が期待できるという。
また,波長450nmの青色半導体レーザー素子複数個からの光を一本のファイバーに集光・伝播させているため,100Wの青色半導体レーザーをフレキシブルに取り回すことが可能。また,独自の精密溶接工法を用いた構造により,光源としてはH88mm×W430mm×D420mm(ファイバーを除く)とコンパクトであり,他の機器への組み込みが容易。
レーザーの出力はパソコンから制御可能であり,連続出力から最大10kHzの変調駆動ができる。加工部周辺への影響が最小限の入熱量で金属を加工可能なため,熱変性領域の小さい高品質・高効率な加工が期待でき,さらなる加工時間の短縮や消費電力の低減にも貢献するとしている。
島津製作所は同社が展開する青色半導体レーザー「BLUE IMPACT」シリーズに今回開発した製品を加えて1月30日から販売を開始し,金属加工用レーザー加工機向け光源として,さらなる展開を図る。