凸版,質感を正確に記録するアーカイブ技術を開発

凸版印刷は,光沢や表面の凹凸,色調など,照明環境や観察方向によって見え方が異なる素材の質感を精確に記録するデジタルアーカイブ技術を開発した(ニュースリリース)。これにより,これまで困難とされてきた文化財特有の質感をVR上でより忠実に再現することが可能となった。

この技術ではまず,光反射特性を「光沢」,「色」,「微細凹凸」といった質感の要素に分解する。人が視覚によって対象の質感を知る手がかりとなる陰影や光沢は,照明環境や観察の位置によって変化する。文化財の質感記録撮影時には,照明装置を移動させながら対象となる文化財に照明をあて,その反射光を高解像度カメラで連続的に撮影することにより,あらゆる方向からの入射光に対する反射光の変化を余さず取得する。

撮影画像から文化財表面の光反射特性を「光沢」,「色」,「微細凹凸」といった質感の要素に分解することで,照明環境や観察方向に依存しない文化財そのものの質感データとして精確にデジタルアーカイブできる。質感データを活用することで,同一の材質であっても微細な質感の違いを正しく再現することが可能となった。

今回,独自の分割撮影手法により重要文化財「風神雷神図屛風」,「夏秋草図屛風」の高精細撮影を実施。独自合成技術を用いて,分割撮影した画像を生成。各作品30億画素の高精細画像で作品を実寸大で精確に再現した。また,高精細画像に質感要素データを取り込むことで,VR上で設定した照明の位置・強さや視点位置に応じて,文化財の質感も物理特性に基づいて忠実に再現している。

この技術の活用により,VR作品「風神雷神図のウラ -夏秋草図に秘めた想い-」では,ロウソクの光で照らした場合や,月明かりに照らされた場合の見え方など,実際の文化財では不可能な条件下での鑑賞を,より精確にシミュレーションしている。また,デジタルアーカイブからVR制作,公開までの各工程において,BT.2020の色域基準に準拠した一貫したカラーマネージメントを実施し,色鮮やかでより忠実な文化財の再現を実現した。

この技術は,1月4日(木)から東京国立博物館東洋館内にあるVR作品の上演施設「TNM & TOPPANミュージアムシアター」にて公開するVR作品「風神雷神図のウラ -夏秋草図に秘めた想い-」において,同館の所蔵品の中でも名品と名高い2作品,重要文化財「風神雷神図屛風」および「夏秋草図屛風」の再現に挑戦している。

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