OIST,STED顕微鏡で大腸菌の分裂機構を可視化

沖縄科学技術大学院大学(OIST)は,最先端のイメージング技術である超分解能誘導放出抑制(STED)顕微鏡を使用することにより,大腸菌の分裂機構をナノスケールで視覚化することに成功した(ニュースリリース)。

全世界的に抗生物質耐性菌の出現が増加している。バクテリアの細胞分裂を阻止する有効な方法の一つは,細胞分裂及び増殖機構を標的にすること。しかしそのためには,バクテリア細胞分裂機構の構造と仕組みをより詳細に把握しなくてはならない。

ほとんどのバクテリア細胞は,二分裂,すなわち母細胞にくびれが生じ,同じ2つの娘細胞に分離する,というプロセスを通して複製する。その細胞分裂の間,「divisome」と呼ばれる大きな分子機構が細胞内に形成されるが,今回研究グループは,大腸菌のdivisome主要構成因子である「FtsZ」と「FtsN」という二つの重要なタンパク質の空間配置を明らかにした。

従来の蛍光顕微鏡法は分解能が比較的低く,非常に近距離で隣接している物体同士は単一の物体として見えていたため,これまでdivisome中のすべてのタンパク質は1つの巨大複合体に集結していると考えられてきた。しかし,研究グループは超分解能誘導放出抑制(STED)顕微鏡を使用することにより,大腸菌の分裂機構をナノスケールで視覚化することに成功した。

研究では,FtsZとFtsNに緑と赤の蛍光標識をそれぞれに付与することで,これらのタンパク質が大きな集合体として局在し,かつ細胞分裂部位の周辺に不均一に分布していることを明らかにした。細胞分裂初期においては,2つのタンパク質は重複しないパッチ状リング構造を形成する。

細胞分裂が進行するにつれ,FtsZにより形成された緑色リングは,FtsNにより形成された赤色リングの内側に移動する。これらのタンパク質は常に重なっているのではなくいくつかのグループに分かれている,という知見により,divisomeは単一分子機構としては作用しておらず,むしろ各タンパク質グループがそれぞれ特定の役割を果たしていると考えられた。

細胞分裂機構のより詳細な全体像がわかれば,バクテリアの細胞分裂と増殖を防ぐ新たな抗生物質を設計することができる。研究グループは,より多くの細胞分裂機構に関与するタンパク質を観察し,これらのうちどれを薬物で標的化すべきかを今後解明するとしている。

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