東大ら,電顕で気体の化学結合や挙動を観察

東京大学,日立ハイテクノロジーズらの研究グループは,環境型電子顕微鏡で測定される電子分光と,分光シミュレーションを高度に融合することにより,ナノメートルレベルの高い空間分解能で気体の化学結合や挙動を調べる手法を開発した(ニュースリリース)。

気体が関わる反応は産業活動や生命活動に欠かせない。気体分子は振動,回転,並進を繰り返しており,そのような気体分子の動的な挙動が反応効率などの気体の特性と密接に関係している。

古くから,試料中の気体分子の平均的な挙動については,さまざまな方法で解析が進んできた。しかし,化学反応の中には,固体と気体が接する界面などの局所的に進行するものも多く,ナノメートルレベルといった高い空間分解能で気体分子の挙動を解析する手法が求められてきた。

研究グループは,高い空間分解能を持つ環境型電子顕微鏡で測定される電子分光の吸収端近傍微細構造(ELNES)に注目し,異なる温度のさまざまな気体からELNESを取得した。さらに,ELNESから振動情報を得るための新たな分光シミュレーション法を開発した。

その結果,測定されるELNESから,気体の挙動に関する情報を取得することに成功した。さらに,今回の研究から気体分子の温度を測定したり,気体分子への熱の伝達原理を理解したりすることもできた。

ナノメートルレベルの高い空間分解能を持つELNESを用いて,気体分子の挙動を解析できるこの手法は,高性能な燃料電池や触媒の開発に利用することができ,今後の持続可能な社会の確立に大きく役立つと期待されるとしている。

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