東北大ら,中性子性合体の偏光度観測に成功

東北大学,イタリア国立天文台,英レスター大学,中国 紫金山天文台らの研究グループは,重力波が検出された,きわめて高密度の中性子星同士の合体からの光の振動方向に,偏りが小さいことを発見した(ニュースリリース)。

中性子星のような高密度の星が動くと,その重力によって生じた空間の歪みが波紋のように周囲へ伝わる重力波が生じる。これまで2つの中性子星が合体する際にも,強い重力波が発生することが予測されており,30年以上,重力波検出器の主要なターゲットとなってきた。

2つの中性子星の合体は,宇宙のどこで作られたのか未だ分かっていない金やプラチナなど重い元素の生成現場の候補としても研究されてきた。その根拠は重力波の観測だけでは得られず,光の観測も必要。重い元素の生成現場を確定することは,宇宙全体における物質の進化を探る上で重要となる。

2017年8月17日,アメリカのLIGOチームとヨーロッパのVIRGOチームは,地球から約1億3千万光年離れた場所から届いた重力波を検出。波形の分析から2つの中性子星の合体から発生したものと分かり,約70もの望遠鏡がこの天体現象を一斉に観測し,その一部の望遠鏡が重力波の発生源からの光を検出することに成功し,明るさの分析を行なった。

そのデータは,中性子星の合体が金やプラチナなどの重い元素を生成しているということを示唆するもの。他のチームが光の明るさの観測を行なった中,研究グループは,唯一,光の振動方向の偏りの観測を行なった。その結果,大きな偏りは検出されず,全体の光量に対する偏った光量の割合は約0.5%以下であるという厳しい制限を与えた。

もし金やプラチナなどの重い元素が作られていなければ,電子の散乱が卓越して偏りが検出されると予想されたが,重い元素が多量にあるとそれらの吸収によって偏りは小さくなる。この結果は,中性子星の合体が重い元素の生成現場であるということと整合的だという。

また,光の振動方向の偏りは,光の明るさとは全く別の情報となる。中性子星合体の進み方の理論が未だ完全には確定していない中で,二つの独立した観測情報から同じ結論が示唆されたことは結論を強める意味で非常に重要となる。中性子星合体の光の振動方向の偏りは,重い元素が合体現象のどの部分で作られ,その部分がどういう形状をしているのかについても知見を与えてくれる。

今後,より多くの重力波発生源から光の振動方向の偏りを明るさと合わせて観測することで,重い元素の生成現場の確定,中性子星合体現象の詳細なメカニズムの解明につながることが期待されるとしている。

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