矢野経済研究所では,国内のワイドバンドギャップ(WBG)半導体単結晶市場の調査を実施した(ニュースリリース)。
それによると,Siより大きなバンドギャップを持ち,パワーデバイスとして期待されるWBG半導体単結晶は,市場化に向けた取り組みが進展しており,2016年の国内WBG半導体単結晶市場(メーカー出荷金額ベース)を88億2,600万円と推計した。
材料別構成比は,SiCが56%(49億5,900万円)を占め,次に,GaNが40%(35億5,900万円)となっている。Ga2O3とAlNは市場が立ち上がったばかりで,とくにAlNは現時点では大口径化が難しいため,用途は当面LEDのみに限られる。ダイヤモンドは単結晶の電子材料としてはまだ研究開発段階であり,2016年で2億円規模であった。
こうした状況から,2017年の国内WBG半導体単結晶市場を前年比108.8%の 96億400万円と予測した。また,既存材料であるシリコンウエハーの市場規模と比較すると,2016年でWBG半導体単結晶市場規模は1~2%程度であり,僅かではあるが代替が始まっているとする。
車載アプリケーションへの採用は,SiCを中心として市場化が進められているが,今後,2020年以降の車載アプリケーションへの採用可否とその時期がその将来を左右するという。車載アプリケーションへの採用により,WBG半導体単結晶は2つの大きな成果を得ることになるという。
1つ目は,過酷な環境で人命を預かる自動車への採用は高い信頼性のハードルを越えたことを意味し,ターゲットにすべき他のアプリケーションの大部分へ搭載可能な性能を持ち合わせたことを意味する。
2つ目は安定した大量供給の証明。量産技術が伴っていなければ工業材料として事業継続することはできない。また,これらの副次的な成果として低価格化の実現も挙げられる。
市場化フェーズの違いにより,各材料の開発進捗度は異なる。SiCは,待望の6インチの製品が本格的に浸透し,市場でのプレゼンスを高めている。GaNは高品質な2インチは普及しているが,4インチの普及が想定より遅れている。
Ga2O3は2インチが市販されているのみだが,融液成長法による大口径化の早期実現が期待されている。AlNも市場化のための目標は2インチとなるが,現時点では大口径化には時間がかかるとされている。ダイヤモンドは2インチ化を目標として各プレーヤーが日々研究を重ねている。
今後のWBG単結晶市場の成長には,関連領域を含めた各プレーヤーがそれ ぞれ次なるステージへ進むことが求められているとする。これに向けて必要なことは2つあるという。
1つ目は単結晶の成長技術。2つ目はその後の単結晶をデバイス化しモジュール化する“活かす”技術。これがないと高品質の結晶を製造できたとしてもアプリケーションに搭載することができず,開発自体が無意味となるとしている。
今後のWBG半導体単結晶市場は,成長の一途を辿るとし,2023年の国内WBG半導体単結晶市場(メーカー出荷金額ベース)は152億9,500万円と予測する。
これは研究開発用途での需要の高まりや各材料による搭載アプリケーションへの採用種類の増 加,そのアプリケーションの拡大が主な成長要因で,材料ごとに置かれた状況は違うものの,総じて継続的な成長が続くと見る。
材料別に2023年の構成比をみると,SiCが57%(87億4,900万円),GaNは31%(46億9,700万円)と市場規模は増加するものの構成比は低下。Ga2O3は2023年には8億7,200万円と構成比で6%を占めるまで成長するとする。
AlNは2023年で4%(6億4,500万円)とGa2O3に次ぐポジションとなる。ダイヤモンドの本格的な市場化は2023年以降の見込みで,2023年で2%(3億3,200万円)を占めると予測する。