高輝度タイプと超小型タイプのRGB半導体レーザー光源モジュール開発 ─実装実証で優位性を確認

高輝度タイプRGBレーザー光源装置の外観
高輝度タイプRGBレーザー光源装置の外観

島津製作所と大阪大学は,高輝度タイプと超小型タイプの2種類のファイバー結合型3原色レーザー光源モジュールの開発を発表した。

この成果は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクト「クリーンデバイス社会実装推進事業/最先端可視光半導体レーザーデバイス応用に係る基盤整備」の一環として取り組んだもので,プロジェクトリーダーは大阪大学光科学センター・副センター長/特任教授の山本和久氏が務めている。

プロジェクトを推進するにあたっては,2014年10月に技術開発や標準化の策定,新規アプリケーションの創出を目指す産学連携組織「可視光半導体レーザー応用コンソーシアム(VLDAC)」が設立されており,現在,54団体が参画している。

超小型レーザー光源モジュール
超小型レーザー光源モジュール

今回開発を発表したのは,シネマ用プロジェクターやテレビなどの高輝度表示装置,さらにレーザー照明用光源に有効とする高輝度の3原色レーザー光源モジュールと,ヘッドマウントディスプレイ(HMD)やヘッドアップディスプレイ(HUD),携帯型プロジェクターなどの走査型レーザー投射向け超小型の3原色レーザー光源モジュールだ。この2種類のレーザー光源モジュールを実際に機器に組込み,その性能評価も行なった。また,光源の実用化に向けては,特性仕様と信頼性に関するガイドラインを,VLDACサイト内(http://vlda-cons.org/business/guideline)で公開している。

開発したレーザー光源モジュールだが,高輝度タイプは赤(R)と緑(G)が10 W,青(B)が20 Wの出力特性を持ち,1万lmクラス以上の輝度実現の可能性を示すものとしている。この値はキセノンランプや高圧水銀灯で得られるが,レーザー光源では最終製品において省エネ性能や長寿命化を享受することが可能となり,アドバンテージが高い。

一方,超小型タイプは主要部の容積が0.5 cc(1×1×0.5 cm3)というサイズを実現。レーザーは,例えば,プロジェクターに組み込んだ場合,光線の拡散がほとんど無いため,投影面の距離や形状に依存することなくフォーカスフリーで投影像を写し出すことが可能になる。

また,このような特性は,人間の眼にも適用できる可能性があることから,レーザー光を直接網膜上に走査することにより,近視などの屈折異常がある場合でも,ピントの合う画像を得られるHMDの実現が期待されている。

さらに,半導体レーザーの数を調整することで,出力の高低差に柔軟に対応できるほか,ファイバーを介した光源と発光部分の分離が可能という利点もある。例えば,これを自動車ヘッドライトに適用することで,遠方照度性と照射位置の制御性を高めることができ,光源本体の搭載位置を自由に選択できるというメリットがある。

こうした様々な用途が想定されている中にあって,これまで半導体レーザーデバイスの応用には,「モジュール実装のところで標準化が遅れていた」と島津製作所 デバイス部 センサ・デバイスビジネスユニット・技術グループ長の東條公資氏は課題を指摘する。

具体的には,応用機器ごとに異なる設計を行なっているほか,メーカーごとに安全性や信頼性の面で独自の設計基準を設けており,業界における統一した基準がなく,そのため,開発の効率化が必ずしも図られていないというのが実情という。

この解決を図ったのが,今回の成果であり,プロジェクトにおいて汎用モジュールの開発に取り組んだ。島津製作所が提案しているのは,光ファイバー結合型光源モジュールである。