高輝度タイプと超小型タイプのRGB半導体レーザー光源モジュール開発 ─実装実証で優位性を確認

レーザーは色再現性の範囲がLEDに比べても広く,将来の8K放送に採用される色域規格BT.2020をカバーできる。これはレーザーの光取り出し効率が100%であることに起因するもので,山本氏は「今後は内部量子効率を高めることができれば究極の光源となる」と語り,現状の41%を次の開発フェーズで60%に高めていくとし,将来的には80~100%を目指すとしている。内部量子効率の向上策については現在,可視光半導体レーザー応用コンソーシアムに組織されている半導体レーザー専門委員会で議論が進められている。

可視光半導体レーザー搭載製品の世界市場は,2030年に約50兆円になるとも予測されており,赤色,青色に加えて緑色半導体レーザーも実用化され,レーザーディスプレーやレーザー照明など様々な製品への応用展開が可能となっている。

しかし,山本氏は「RGB半導体レーザーを含め,要素技術が急速に立ち上がったものの,製品展開への価値が必ずしも浸透していない。レーザー応用普及のための製品に対する標準化や共通化,安全性などが整備されていなかったためだ」と語る。

そのため,可視光半導体レーザー応用コンソーシアムでは,3原色レーザー光源モジュールの性能基準や信頼性,安全性などに関する6種類のガイドラインを整備。このほど,半導体レーザーの初期特性と信頼性,モジュールの仕様について,そのガイドラインを公開。この4月には安全性を確保する技術的基準とスペックル評価方法を,5月にはモジュールに関する信頼性について,それぞれガイドラインを公開する予定だ。

国際標準化に向けた提案支援活動も進めている。具体的には①ファイバー光源モジュールの仕様,②スペックル性能評価指数,③ヘッドマウントディスプレイ用光源・網膜走査方式評価方法,④ヘッドランプユニットの仕様などをIEC TC110やUNECE/WP29/GREに提案する。このうち,③についてはIEC TC110においてブランク詳細仕様がPWIとして登録。①と④についてはこの6月末までに標準化文書暫定案の作製を目指すとしている。

また,山本氏は「コンソーシアムの参画機関を,1年後には150機関にし,2020年までに約500機関とし,2030年には約1,000機関を目指す」としており,最終的にはグローバル化も図る計画で,可視光半導体レーザーの応用展開を本格化させる。◇

(月刊OPTRONICS 2016年5月号掲載)