東京理科大とオーテックス,紫外線硬化樹脂による高強度モスアイ構造転写技術を開発

図1 スチールウール擦過試験前後のモスアイ構造と反射率(擦過試験条件:スチールウール♯0000,700 gf,10往復)
図1 スチールウール擦過試験前後のモスアイ構造と反射率(擦過試験条件:スチールウール♯0000,700 gf,10往復)

東京理科大学とオーテックスは共同で,高強度で防汚性を持つ紫外線硬化性樹脂を用いたモスアイ構造の転写に成功した。

モスアイ構造はナノオーダーの針状構造で,反射防止効果があり,従来モスアイ構造を用いた反射防止フィルムが大型ディスプレイの表面に採用されてきた。しかし,モスアイ構造はナノオーダーの微細構造のため,触ると壊れ,指紋が付きやすくふき取ることが難しいという問題点があった。

今回の成果は,これを解決するもので,モスアイ構造の強度と防汚性を高めたことにより,スマートフォンなどのタッチパネルへの使用を可能にする。また,モスアイ構造表面の水の接触角は150°以上で超撥水性を示すことから,この性質を利用した製品などにも使用できると期待されている。

図2 モスアイ構造の防汚性
図2 モスアイ構造の防汚性

モスアイ構造は,グラッシーカーボン基板に酸素イオンビームを照射することで形成されるが,今回開発した技術は,グラッシーカーボン上のモスアイ形状を,新開発の紫外線硬化樹脂を用いてナノインプリントによって転写することで実現した。これにより,触れても壊れない超高強度の樹脂性モスアイ構造の複製に成功するとともに,反射防止効果に加え,視認性も向上した。使用した紫外線硬化性樹脂は,防汚成分が含まれているため,指紋などのふき取りも可能という。

実際に開発したモスアイ構造の強度と反射性能も評価した。スチールウール700 gfを用い,開発品と従来品との擦過比較試験を行なったところ,開発品では擦過後も構造が残り,反射率も可視光領域で0.3%未満の低反射率が維持できていることを確認した。また,防汚性試験では,人工指紋液を用いたモスアイ構造のふき取り試験を行なったところ,開発品では擦過前後で防汚性に変化がないことを示したという(図1,2)。

開発した技術はタッチパネル表面や,スマートフォン,タブレットなどの表面の保護・視認性向上フィルム,ディスプレイなどの視認性向上,太陽電池表面での反射防止などへの応用が期待されている。◇

(月刊OPTRONICS 2017年9月号掲載)