計測分析技術は,それ自体の研究・開発が進んでいる一方,既存の計測・分析機器を用い,製品開発につなげるための分析・評価手法の確立が展開されている。計測・分析技術の応用分野は幅広く,装置・機器も多様なものが製品化されており,市場が形成されている。
光・レーザーのアプリケーションという観点から見ても,計測・分析分野は重要なマーケットの一つと言え,光・レーザーが果たす役割は大きいものがある。そのような中にあって今回,レーザーのアプリケーションの一つとして,LA-ICPMS(レーザーアブレーションICP質量分析システム)に注目した。この手法は産業応用に向けた研究・開発が活発化しており,今後の展開が期待されている。LA-ICPMSは,固体試料に対する分析だが,今回,その産業応用の可能性を探る。
■LA-ICPMSとは
LA-ICPMSは物質にレーザー光を照射し,発生した固体エアロゾルを大気圧高温プラズマ(ICP)によりイオン化して質量分析するという手法である。LA-ICPMSは四重極型ICPMSとセクターフィールド型ICPMSを用いたものがあるが,一般的に普及しているのは四重極型である。
LA-ICPMSにおけるレーザー照射径は60 μm〜100 μm程度で,例えば,ガラス試料を測定したときの検出限界はサブppmオーダーで高感度な計測を可能にする。レーザー光源は主として波長213 nm,266 nmのNd:YAGレーザーや193 nmのArFレーザーが用いられ,重金属元素の分析を最も得意としている。
LA-ICPMSは,これまで地球化学分野における研究用途で適用されてきたが,近年ではプラスチック製品,半導体など電子デバイスなどにおける材料分析の応用展開が進み,材料中の元素の偏在化や局在化パターン,深さ方向の分布などを分析するツールとして用いられている。こうした対応は2D/3Dマッピング開発にもつながっている。
LA-ICPMSが特に注目される背景には,EUのRoHS指令によるところが大きい。RoHS指令では水銀,カドミウム,六価クロム,鉛の使用を厳しく制限しているが,これらは重元素であるため,電気・電子機器製品に含有する重元素分析ではLA-ICPMSによる分析ニーズが高まっている。また,製品開発において材料組成を把握することで,製造プロセスや機能特性の最適化にもつなげることができるため,LA-ICPMSによる分析の必要性が増している。