LA-ICPMSの産業化の可能性 ─生体イメージング分析に注目!

■生体元素イメージングへの適用
写真2 装置内部の様子で,ガルバノ光学系の拡大写真
写真2 装置内部の様子で,ガルバノ光学系の拡大写真

LA-ICPMSは医学応用にも展開が期待されている。特に生体イメージング分析が注目されており,その研究開発は活発化しているという。生体イメージング分析手法には電子顕微鏡やCIMS(化学イオン化質量分析)などがあるが,LA-ICPMSを用いる優位性は広い領域(試料を大きいサイズのまま)を高速に分析することができる点にあるとされている。

平田研究室では,生体元素イメージング分析研究にも取り組んでいる。平田氏によれば,「LA-ICPMSを使用することで,例えば,胃カメラや外科手術で切除した検体をそのまま分析することが可能になる。レーザーを用いるため,特に高速に分析ができるのは強みとなる」と語る。

医学研究分野では,薬剤による治療前後の効果を把握するため,試料の一部分だけではなく,そのすべてを計測し,比較することが求められている。LA-ICPMSはこの治療前後の比較分析に有効だとしている。

平田研究室では,その生体元素イメージング分析装置の製品化に取り組むという。当初はナノ秒レーザーを搭載したものとなり,装置は全自動化を図るとしている。平田氏は「ボタン一つで誰もが同じ操作で同じ結果を得ることができる装置を実現する」という。全自動化に向けては,イメージング条件を揃えたソフトウェアの開発を進め,さらに将来的には定量的イメージング分析を可能にするフェムト秒レーザーを搭載した装置開発を視野に,小型のレーザー光源を導入するとしている。

■ナノ粒子の分析にも期待

平田氏によれば,日本市場においてLA-ICPMSが求められるのは,濃度分布など材料分析が50%,イメージング分析が50%になるとしている。将来的にはイメージングの比率が高まると見られており,特に今後の応用展開が注目されているのはナノ粒子のイメージング分析だ。LA-ICPMSを用いることで,その信号強度の大きさからナノ粒子のサイズを見積もることができるという。

ナノ粒子は食品分野や製薬,スキンケア分野などで応用が進んでいる。LA-ICPMSの応用として,「例えば,スキンケアの場合では,ナノ粒子のサイズによって生体に与える影響を評価することができるだろう」(平田氏)としており,ナノ粒子サイズの数値化とともに有害性の把握のための実証実験も進め,評価法の確立を図るとしている。◇

(月刊OPTRONICS 2017年9月号掲載)