同社ではPOFの自動車向け用途をさらに拡大すべく,通信用途とは別に装飾用,そしてファイバーセンサー用途としてのPOFの利用を提案している。
装飾用途としては,側面発光プラスチックファイバーを開発している。これはアクリルのコアに対し,フッ素樹脂をクラッドとして用いることで,あえて光をコア内で全反射させずに漏らすように設計したもので,φ0.25 mmのタイプの場合,ファイバー端から40〜50 cmの範囲で光を均等に漏らすことができる。
φ1 mmまで4種類をラインアップし,異なる系のファイバー同士で編むこともできる。同社が提供するのはファイバーとしてだが,繊維企業としての歴史を持つ同社は,これを布状に編み込むような加工の相談にも応じるという。
また,興味深い応用として「歩行者頭部保護システム用センサー」としてのPOFも開発している。セダンなど車高の低い車が歩行者と正面からぶつかった場合,歩行者はまず足元をすくわれた後,頭部を叩きつけるようにボンネットに落下する。ことのとき頭が固いエンジンブロック部に当たると,歩行者は深刻なダメージを受ける可能性が高い。
そこで歩行者のダメージを最小限に抑えるため,車が歩行者と接触した瞬間にボンネットをフロントガラス側から跳ね上げ,エンジンブロックへの接触を回避しようというのがこのシステムで,国内外を含め既に実用化しているメーカーもある。
このシステムは,自動車のボディ数か所に設置された加速度センサーが衝突の衝撃を検知して動作するが,衝突の位置などによっては,センサーが正常に働かないケースが懸念される。そこでPOFを自動車のフロント周りに張り巡らすことで死角を無くしたファイバーセンサーを海外メーカーが開発し,同社がPOFを納めているという。
このPOFは,通信用POFの2層被服構造に対し1層被服構造となっている。これはセンシング感度を損なわないためだが,一方で耐熱温度は通信用POFが85℃なのに対し,このセンサー用POFは105℃と,高温になるエンジンルーム周辺での動作を確実なものにしている。
■キヤノン,新型HMDを発表─自動車開発向けに提案
キヤノンは現実映像とOGをリアルタイムに融合するMR(Mixed Reality)システム「MREAL」の新製品として,広画角・高精細を実現したヘッドマウントディスプレイ(HMD)を開発,この5月より販売を開始。今回このHMDを自動車開発向けに提案した。
自動車開発において試作プロセスが不可欠だが,このHMDを利用することで,プロトタイプの製作プロセスを簡略化できる可能性があるとしている。デザインや設計データを実物大の3D映像で確認できるため,試作回数やコストの削減を可能にするからだ。新製品は広画角・高精細を実現しているため,自動車本体のような大きな立体物のデザインの確認から細かい部品を用いた作業の確認まで,幅広い用途で検証することができるとしている。◇
(月刊OPTRONICS 2016年7月号掲載)