大阪大学の研究グループは,名古屋大学,理化学研究所との共同研究で,眼の網膜にある光センサー細胞(網膜視細胞)におけるエピジェネティック(DNAの配列変化によらない遺伝子発現を制御・伝達するシステム)な制御の仕組みを解明し,神経発生における重要性を明らかにした(ニュースリリース)。
脳や網膜の神経細胞の終末分化がエピジェネティックに制御されているかどうかは、これまであまりよく分かっていなかった。そこで研究グループは,桿体(かんたい)視細胞に発現するSamd7という蛋白質が,その構造からエピジェネティックな制御に関わっている可能性があると注目した。
Samd7のノックアウトマウスを作製し解析したところ,Samd7ノックアウトマウスの眼の網膜では,本来,桿体視細胞ではまったく発現しない青色オプシンが強く発現しており,逆に,もとから桿体視細胞にある桿体オプシンの量が半減していることがわかった。
これにより,神経細胞のアイデンティティー形成にエピジェネティック制御が重要であることがノックアウトマウスを用いた研究で明らかとなった。この成果は,網膜視細胞や神経細胞のアイデンティティー形成の仕組みを理解する上で大きな前進となるものだという。