ガラスの可能性を広げる,SCHOTTの半導体向けソリューション

ドイツの特殊ガラスメーカーSCHOTTは3月31日,半導体やエレクトロニクス分野向けなどの新製品に関するプレス向けの説明会を,同社日本法人事務所で行なった。

製品化を進めるフレキシブルな超薄板ガラスは,同社のオリジナル製法であるDown-Draw法によって最薄25 μm,幅510 mmまでの量産を可能としている。新たにイオン交換技術によって4〜5倍の端面強度を標準生産にて実現しているが,さらに実験室レベルでは新素材により10倍の強度も達成している。これにより最少半径5 mmまでの曲げを数千回実施することもできるようになった。

超薄板ガラスは日本のメーカーも開発を進めており,特に旭硝子や日本電気硝子が力を入れている。いずれもロール状に巻き取ることができることから,フレキシブルな基板としてロール・トゥ・ロールによる製造ラインでの応用が期待されており,両社はこれを特長の一つとして売り込みをかけている。

しかしガラスはプラスチック基板と比べて引っ張りに弱いことから,SCHOTTでは張力をかけながら行なうロール・トゥ・ロールにガラスは適していないとして,ロール状での出荷は可能としながらも,プロセスとしては推奨しない立場だ。

同社では超薄板ガラスがガスバリア性でプラスチック基板よりも優れることから,フレキシブルなOLEDディスプレイを始めとして,MEMS,各種センサーなど,スマートフォンやウェアラブルデバイスなどへ応用されることに期待している。

同社ではこのガラスについて,厚さ145 μmの製品でこれまで100万m2の量産実績があるとしているが,その殆どはカーナビの抵抗膜方式タッチスクリーン向けだという。

タッチスクリーンはスマートフォンをはじめとして静電容量方式が主流になってきているが,長期寿命と信頼性が求められる自動車業界では,相変わらず抵抗膜方式に根強い需要がある。指先からの圧力でたわむことが必要なこの方式では,薄さと機械的強度,フレキシビリティが同時に要求されるため,ガラスのニーズが高いという。

一方,新たな応用として,中国のネットメディア企業であるLeTVは,スマートフォンのコンデンサー型指紋認証デバイスのカバーガラスに同社の超薄板ガラスを採用した。

このデバイスはシリコン半導体アレーを,厚さ145〜175 μmのカバーガラスで覆ったもので,サファイアガラスを用いた同じ原理のデバイスがiPhoneにも搭載されている。

指紋センサーのカバーガラスには強度や高い誘電率が求められるが,同社の超薄ガラスはこれらの条件を満たしながら,サファイアガラスに対して価格面で大きなアドバンテージがあるという。今回,LeTVのスマートフォン向けに50万台分以上の受注があった。

しかし,今のところ超薄ガラスの応用は限定的なことも事実だ。その理由の一つとして加工の難しさがある。切断などは比較的簡単だが,ビアホール加工などの微細加工については高度な技術が要求されることが障壁となっているという。

同社ではレーザーを用いた微細加工を研究しており,厚さ100 μmの超薄ガラス板に直径30 μm,50 μmピッチの貫通穴を,1cm2あたり50,000個作成することもできるとしている。顧客に対しては,ドイツの研究機関と共同で開発したこのレーザープロセスの技術供与も行なうとしているが,フェムト秒レーザーなどハイエンドな機材を使うため億単位の投資が必要になることが,導入が中々進まない一因になっている。この点については日本のメーカーも同様の悩みを抱えているようだ。

高いフレキシブル性や誘電率,強度など,同社の超薄板ガラスは高い水準を達成していることから,安価な加工技術さえ確立されれば,市場の拡大が期待できるのは間違いなく,日本メーカーとの競争も注目される。