大日本印刷(DNP)は,ヘッドマウントディスプレー(HMD)の画質を改善して,映像へのリアルな没入感を高めるピクセルスムージングフィルム「DNP ヘッドマウントディスプレイ用画素隠蔽フィルム」を開発した(ニュースリリース)。
HMDは小型のディスプレーを光学レンズで拡大して視聴する特性上,光の三原色であるR(レッド)G(グリーン)B(ブルー)で構成される画素が拡大されて見えてしまい,没入感が得られにくいという課題があった。
開発したフィルムをHMD内に組み込むとRGBの色領域は拡大され,RGBの混色防止などのために各色領域の間に施されているブラックマトリックスを見えにくくする。これにより画質を改善して映像へのリアルな没入感を高める。
均等に色領域を拡大すると縦横配列の長さが異なる色領域の場合は,ブラックマトリックスが見えてしまうか隣接する色が混じり合うという現象が起きる。このフィルムは,光の拡散を精密に制御することで,画像の鮮明性を維持しながらブラックマトリックス領域のみを見えにくくすることに成功した。
これまでもHMDの没入感を高めるために微細な加工を施した均等に画素を拡大する単層のマイクロレンズなどが使用されていた。今回同社が開発したフィルムは,微細な加工を施した2層レンズにより3色の色領域のさまざまなパターンの配列に対応することが可能で,画質改善における設計の自由度が高まる。
このフィルムは,同社独自のレンズ設計・微細加工技術により,ディスプレーの構成やRGBの各色領域の配置形状に合わせた最適な光の制御が可能であり,専用ディスプレーを搭載したタイプと,スマートフォンなどのモバイル機器を装着するタイプの両方のHMDに組み込むことができる。
同社は新開発のフィルムを,HMDメーカーをはじめ,ゲーム機器メーカーやモバイルメーカーなどに年内から提供を開始し,2021年度までに年間で50億円以上の売上を目指すとしている。