次世代自動車を担うレーザーヘッドランプとLiDARの開発状況

製品化はまだだが,メカレスでレーザーを走査する技術として期待したいものに,NTTが開発した電気光学結晶,タンタル酸ニオブ酸カリウム(KTN)がある。

この結晶は透明で,電圧を印可すると透過する光が偏光する性質を持つ。もともとは通信デバイスの材料として開発されたが,大型の結晶成長が可能になったことで,様々な応用が模索されている。

KTNの大型結晶
KTNの大型結晶

KTNの特長は,一般的にメカニカルスキャンやMEMSでトレードオフとなる,光の走査速度と走査角を両立できるという点にある。

これを利用して,横軸方向を200 kHzで高速走査する光断層干渉計測システム(OCT)を大阪大学が開発するなどの実績もあり,LiDARへ適用されれば高速で低消費電力の製品が実現できるかもしれない。

なおKTNについては月刊OPTRONICS 2015年8月号特集「進化する自動車をさせる注目の光技術」中「電気光学効果を用いた非メカ式光スキャナー」に詳しい。

上述したように現在のLiDARは高価格であるほか,悪天候などの外乱に弱く,アイセーフである必要もある。雪が積もれば白線の検出もできなくなるなど課題も多い。低価格化と高性能化が進むカメラとの競争もある。

しかし,「カメラと違い,実際に物体に反射して戻ってきたというデータには説得力がある」(自動運転車開発企業)というように,ADASのレベル向上や自動運転の実現に向けては,LiDARに大きな期待がかかっているのも確かである。

今後,LiDARのさらなる性能向上と普及可能な価格の実現に,日本企業の奮起を期待したい。◇

参考

(月刊OPTRONICS 2016年1月号掲載)