次世代自動車を担うレーザーヘッドランプとLiDARの開発状況

■量産化に向けた課題

レーザーヘッドランプの普及にはまずコストという問題がある。BMW i8の場合,レーザーヘッドランプはオプション扱いで,その価格は日本国内で85万円と発表されている。

車両だけで約2,000万円もする車だけにこうした数字も成り立つが,国産高級車でも搭載はまだまだ厳しい価格となっている。

またエネルギーの大きいレーザーを使用することに安全面での懸念も残る。AudiやBMWのレーザーヘッドランプは,青色のレーザー光を黄色の蛍光体にぶつけることで白色光を得ている。BMWではこの時点でレーザー光は従来の光源と同じ「無害」な光になると表現している。

その一方で先行車や対向車がいるとき,また街中など低速で走行するときにはレーザーヘッドランプが点灯しないようにするなど,光が人の目に直接入らないようにしており,安全性に関して全くの手放しではないことも伺わせる。

国内ではどうであろうか。現在,レーザーヘッドランプに関しては慎重な議論が行なわれており,可視光半導体レーザー応用コンソーシアムでは安全面についての基準作りを検討している。

「この点をもっと議論してから採用につなげたい」(国内自動車メーカー)というように,日本の自動車メーカーは,まずは共通したルール作りをした上で,本格的な検討を始めたい考えだ。

さらに周辺技術にも解決すべき課題がある。例えば放熱の問題だ。バルブからLEDになることで光源そのものは劇的に小さくなったが,一方でLEDはヒートシンクが大型化しており,「ヘッドランプユニット全体ではむしろ重くなっている」(国内自動車メーカー)との声もある。レーザーはさらに熱に敏感なことから,より繊細で省スペースな熱制御の実現が求められるだろう。

他にも10年を超える過酷な環境に耐えることができる蛍光体や光学部品,また限られた空間や高温での取り回しが可能な光ファイバーやコネクター類など,関連する部品も新たに必要となる。

いずれにせよ,レーザーによるヘッドランプのインテリジェント化を目指す開発競争はスタートをきった。先行するドイツメーカーに対して国内のメーカーはどのような動きを見せるのか,今後の開発の行方に注目したい。