自動運転バス調査委員会,一般試乗会を開催

著者: sugi

自動運転バスの実用化に向け,その社会的な受容性や安全性などを調査する「自動運転バス調査委員会」(会長:須田義大 東京大学教授)は7月18日~23日,プリンス芝公園(東京・港区)にて行なった自動運転車両の実証実験に併せて,一般試乗会を実施した。

同委員会は7月4日に設立された。メンバーには東京大学生産技術研究所 次世代モビリティ研究センター,公益社団法人日本バス協会,東北アクセス株式会社,第一交通産業株式会社,株式会社みちのりホールディングス,ジェイアールバス関東株式会社,京阪バス株式会社,一般社団法人安全運転推進協会,株式会社教習所サポート,SBドライブ株式会社が参加している。

今回の実証実験では,ドライバーがいない状態での走行が可能な完全自動運転「レベル4」を実現した車両を用い,一般の人の試乗を通じた自動運転車両に対する受容性や車両性能の評価を実施した。実験は1か所のバス停のほか,人が車両の前に飛び出すイベントを用意した1周約150mのクローズドの環状コースを時速8kmで周回した。

実験で使用した車両はフランスのベンチャーNavyaが開発した「NAVYA ARMA」。乗車定員15名(座席数11),全長4.75mの電気車両で,設計上の最高速度は時速45km,最長走行時間は13時間となっている。2016年からスイスで公共交通機関として導入されているほか,アメリカ,オーストラリア,ニュージーランドなどでもこの車両による実験走行が行なわれているなどの実績がある。今回,委員会メンバーでソフトバンクグループのSBドライブがこの車両を購入し,実験に提供した。

「NAVYA ARMA」の自動運転は主にLiDARとGPSによって実現されている。LiDARは車両の前後(実際には車両に前後の区別は無く,どちらの方向にも走行可能)に各3機ずつあり,その構成はフロントガラス上部に100m先までの道路状況をセンシングする3D(マルチレイヤ―)LiDARが1機,ヘッドランプの間とバンパー中央部に,前方の障害物を検知するシングルレイヤーLiDARが1機ずつとなっている。さらに,車両両側にもシングルレイヤーLiDARが1機ずつあり,計8機のLiDARで全周の計測と検知を行なう。

車内に運転席は無く,ルートの学習はハンドルの代わりにゲーム機のコントローラーを用いて人が操縦して行なう。その際に3D LiDARで作成したマップと走行時のマップ,さらにGPSデータを重畳させて自車の位置を確認するSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)が,この車両の自動運転技術の中核となっている。他にも自動運転のセンサーとして使えるステレオカメラも装備するが,今回の実験ではドライブレコーダーとして使用するにとどめている。

実際に乗車を体験したところ,発進,加速,減速,停止はとてもスムーズで,自動運転にありがちな急ハンドルや急ブレーキとといった操作は無く,飛び出しを検知した自動停止,バス停での停止でも「怖い」と思わせるような挙動は無かった。今回は時速8kmと低速だったので,車道で走ったときの速度での性能が気になるところだ。

一方,GPS信号の受信状況が悪かったのか,記者が見ている前で停止するトラブルがあったほか,風の強い日には揺れる木の枝をLiDARが障害物と誤検知して停止することがあったという。信号や交差点の無い単純な周回コースであっても,自動運転には実用化に向けた技術的課題が残っていることも改めて認識させられた。

今回車両を提供したSBドライブは今回の実験とは別に,内閣府プロジェクトにより沖縄県で行なわれた自動運転バスの公道での実証実験でも,同社と先進モビリティ株式会社が開発した自動運転車両を提供している。同社は地方都市,過疎地,観光地,離島,復興地を自動運転バスの需要地と見ており,連携協定を結ぶ,北九州市,浜松市,鳥取県八頭町,長野県白馬村で2018年にも公道実験を行ないたいとしている。

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