東京大学の研究グループは,粒子配置が乱雑なまま凍結したガラス状態の固体が,突然「雪崩」のような粒子運動を起こし,秩序だった状態に変化する「雪崩」現象の機構を,数値シミュレーションにより解明した(ニュースリリース)。
「ガラス」といえば「窓ガラス」が連想されるが,一般には,液体のような乱雑な構造を持ったまま固まった固体全般を指す。ガラス状態にある物質は,結晶とは大きく異なる性質を持ち,材料として非常に注目されている。
しかし,本質的に非平衡な状態であるため,長期間での安定性に問題がある。例えば,長い時間がたつと,ガラスの中に微結晶が生じたり,エイジングと呼ばれる遅い変化により大きさが変化したりという現象が知られている。
材料として極めて深刻な問題であるにもかかわらず,このような現象が,どのような機構で起きるのかは,これまで未解明であった。
研究グループは,雪崩現象の起源となる小さな粒子群の構造的な特徴を明らかにするとともに,これら粒子の移動によって固体の機械的な安定性を与える「骨格」構造のバランスが一時的に崩れ,粒子の集団運動が引き起こされること,さらには,ガラスの結晶化とエイジングが,共通の物理的機構に支配されていることを見いだした。
これらの知見は医薬品,半導体材料,光学材料,バイオ試料の低温保存など,ガラス状態の保持が欠かせない材料の開発に,新たな指針を与えるものとしている。