KEKら,精度1μm以下の放射線測定センサーを開発

高エネルギー加速器研究機構(KEK),筑波大学,大阪大学,東北大学のSOIピクセル共同開発研究チームは,世界で初めて1μm以下という超高精度の位置測定が可能なSOI(Silicon-On-Insulator)ピクセルセンサーの開発に成功した(ニュースリリース)。

加速器を使った素粒子実験で“素粒子反応が起きた場所”の正確な観測は研究する上で重要となる。KEK測定器開発室では基幹プロジェクトのひとつとして,従来数 μmであった検出器の位置測定精度の大幅な向上を目指して,次世代型検出器「SOIピクセル技術を使った放射線測定センサー」の開発研究を2005年に開始した。

「SOI」とは“Silicon-On-Insulator”と呼ばれる半導体技術の略称で,CMOS集積回路デバイスを二酸化ケイ素(SiO2)の絶縁膜の上に形成する技術。従来は CMOS回路を基板上に直接形成していたが,絶縁膜を挟むことで基板内に流れる漏れ電流が小さくなるため,高機能化や高速化,省電力化が可能となる。

SOIピクセルセンサーは,SOI基板の絶縁膜の下にあるシリコン層にも注目し,厚みをピクセル型放射線検出用に最適化,信号処理用CMOS回路と一体化することで微細ピクセル化を実現した。これらにより,放射線粒子が生成する信号量を最大化し,電気的ノイズも抑えることで信号対雑音比が向上し,これまでより1桁高い精度で位置測定が可能となった。

今回,2種類のシリコン結晶をひとつのウエハー内に持つというSOI構造の特長を最大限に活かした,高い放射線検出効率を持った信号処理回路一体型の微細ピクセルセンサーを実現した。開発したSOIピクセルセンサーを,米フェルミ国立加速器研究所(FNAL)に持ち込み,120GeV陽子ビームを照射,性能試験を行なった。

前後のビーム位置モニターから予測される通過位置と実際にセンサーで測定した位置を比較した結果,実験グループの期待を上回る0.7μmの精度を達成していた。 素粒子実験で使うセンサーには高い放射線耐性も必要となる。今回の測定では高い放射線量下で性能が劣化しないことも確かめた。

SOIピクセルセンサーは将来の素粒子実験の測定器システムの中核になりうるという。国際リニアコライダー(ILC)やBelle IIの将来のアップグレードなど,崩壊点検出器の性能向上の切り札になる。 また,高性能のX線イメージ検出器としての応用も可能で,放射光を使った物質生命科学の実験装置,X線天文学などの基礎科学はもとより,医療・産業などへの幅広い応用が見込まれるとしている。

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