医療分野においてイメージングの重要性が増している。治療・診断のスピードを上げることにつながり,ひいては患者に対する負担も軽減されると期待されているからだ。また,医療技術の進展という観点から医学教育にも役立つとされている。そのイメージング技術の一つ,8K技術が注目されている。
2017年6月24日,順天堂大学において第1回先端メディカル・イメージング・セミナーが開催された。テーマは「8Kで医療を変える」で,約200名の参加者が集まった。主催は順天堂大学と,8K医療機器開発を手掛けるカイロス。
8Kという超高精細映像技術は,放送分野への応用を目指しNHK技術研究所が開発に取り組んでいるものだが,これを医療応用に展開する議論も進められてきた。8K内視鏡カメラや8K顕微鏡を用い,腹腔鏡手術や眼科治療といった臨床も行なわれている。8K内視鏡カメラにおいては,カイロスが450gの軽量化を実現した硬性内視鏡カメラの開発に成功している。
今回のセミナーは,8K技術の医療応用の可能性を示したもので,8K技術開発の歴史から8K画像医療応用研究の成果,今後の課題が発表された。また,実際に臨床を行なった医師による8K技術の有用性などが語られた。後半は「8Kを医療・医学教育へどう生かすか」をテーマにパネルディスカッションが行なわれた。
8Kの医療応用を巡っては課題が多いことも明らかったとなった。技術面では,カメラにおいて高感度化が求められている。特に眼科手術用カメラでは,光学系がより複雑で,収差や焦点深度,照明量など画像劣化の原因が多いため,高感度化にはさらなる検討が必要としている。
一方で,8Kという膨大な情報量を如何にして編集・保存するかについて,データベース化の問題も指摘された。これに関しては,放送分野において既に技術開発が進んでいるが,医療現場において生かすためには情報の利活用に向けたネットワークの構築が必要とされている。8K映像のアーカイブ化は,術式の確認とともに医学教育にもつながるため,重要な案件となっている。
セミナーを通じては,8K技術の医療応用に対する期待が大きいことを窺えるものとなった。3Dディスプレーの研究・開発も進んでおり,今後の動向が注目されている。また,映像の高精細化によって,手術器具の革新も期待されており,微小なハンドリングを可能にする機器開発の必要性も指摘された。その実現に向けては,医工連携が不可欠となっている。