内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)タフ・ロボティクス・チャレンジの一環として,東北大学,八戸工業高等専門学校,国際レスキューシステム研究機構らのグループは,空気噴射によって瓦礫踏破能力を飛躍的に向上させた索状ロボット「空気浮上型能動スコープカメラ」の開発に成功した(ニュースリリース)。
開発した能動スコープカメラは,太さ直径約50㎜,全長約8m,重さ約3㎏の柔軟な索状ロボット。駆動機能は,①全身を覆う繊毛振動駆動アクチュエータ,②先端部の空気噴射浮上機構,の2つからなる。また,先端にはカメラが搭載され,狭隘環境の内部を確認することができる。
繊毛振動駆動アクチュエータは,能動スコープカメラの従来から提案してきた機構であり,表面を覆うナイロン製の繊毛を振動モータにより細かく振動させることで前方への推進力を得る。振動は内部に搭載した振動モータによって発生する。これにより,索状ロボットの柔軟性を損なわずに,狭隘部にロバストに侵入することが可能になる。
空気噴射浮上機構は今回新たに提案する機構で,噴射方向を制御する能動ノズルにより,浮上,推進,方向制御のための力を発生することができる。この機構を用いることにより,以下の3つの機能を実現することができる。
1.段差乗り越え機能
能動スコープカメラは後ろ向きに空気を噴射し,噴射方向は鉛直下向き成分と後ろ方向の成分を持つ。下向きに噴射することで先端が浮上し,先端が段差に乗り上がる。その後,後ろ向きの噴射方向の成分によって,索状体の先端に推進力を与えることができる。これは,先端が段差に乗り上がった後に後続部分を引っ張り上げるのに役立ち,段差踏破能力の向上に寄与する。
2.方向制御機能
空気の噴射の方向を左右に切り替えることで,横方向の力を先端に加えて先端の方向を大きく変化させることができる。マッキベンアクチュエータなどで先端を屈曲させる従来の方法と比べると,素早く先端の方向を制御することができる。
3.高い視点からの見渡し機能
先端が浮上して方向切り替えすることにより,先端のカメラであたりを見渡すことができる。この機能により,がれき内部の状況を把握しやすくなる。
これら3つの機能は瓦礫環境で要救助者を発見するためには大きな利点となり,災害時にロボットが探索できる範囲を広げることが期待されるという。