日本学士院は,平成29年3月13日開催の第1107回総会において,9件10名(1名に対しては恩賜賞を重ねて授与)を決定した(ニュースリリース)。
そのうち,東京大学生産技術研究所教授の荒川泰彦氏は「量子ドットとその光素子応用に関する研究」で日本学士院賞を受賞した。
受賞は,同氏が半導体中の自由電子を3次元的に閉じ込める量子ドットの概念とその半導体レーザーへの応用を提案するとともに,電子の運動の次元低減がレーザーの諸特性の向上に有効であることを理論的・実験的に示したことによる。
同氏はこの成果に基づいて量子ドットの結晶成長技術と光物性の探究を進め,量子ドットレーザーの実用化に大きく貢献した。さらに,シリコン集積回路とフォトニクスの融合技術においても量子ドットレーザーが重要な光源であることを明らかにしている。
さらに,単一の量子ドットを用いた究極の光源の研究も進め,量子ドット中の励起子物性の制御により,室温を超える高温環境下で動作する単一光子源を実現するとともに,単一の量子ドットを利得媒質としたナノ構造光共振器においてレーザー発振を達成した。また,半導体において初めて真空ラビ振動を観測することにより,固体共振器量子電気力学の礎も築いた。