国立天文台ら,土星リングの明るさの変化を解明

国立天文台と米カリフォルニア大学の研究チームは,すばる望遠鏡が撮影した土星の赤外線画像を使って,リングの明るさや温度を細かく測定することに成功した(ニュースリリース)。

土星のリングの主要部は,内側から順に「Cリング」「Bリング」「Aリング」と呼ばれる「濃さ」の異なる部分でできており,「Bリング」と「Aリング」との間には「カッシーニのすき間」がある。2008年の中間赤外線画像では,「カッシーニのすき間」と「Cリング」が明るく,一方で「Bリング」と「Aリング」は暗く見えている。

しかしこれは,可視光での見え方と正反対となる。可視光では常に「Bリング」と「Aリング」が明るく,逆に「Cリング」と「カッシーニのすき間」は暗く見える。

中間赤外線では粒子が発する「熱放射」を観測するが,高温の粒子ほど熱放射が強くなる。中間赤外線画像から各リングの温度を測定したところ,「Cリング」と「カッシーニのすき間」が,「Bリング」と「Aリング」に比べて高温であることがわかった。「Cリング」と「カッシーニのすき間」は粒子の密集度が低いので,太陽光が良く差し込む。

また,これらのリングを構成する粒子は黒っぽいことも知られている。これらの理由から,「Cリング」と「カッシーニのすき間」は,「Bリング」と「Aリング」 に比べて温まりやすいために,粒子の密集度が低いにもかかわらず中間赤外線で明るく見えたとしている。

一方で可視光では,リング粒子で反射された太陽光を見ている。粒子が多い「Bリング」と「Aリング」は常に明るく,スカスカな「Cリング」と「カッシーニのすき間」はいつも暗く見える。中間赤外線と可視光とでは,光の出かたが違うため,リングの明るさが反転して見える。

ただし2005年4月に撮影された中間赤外線データも確認した結果,この時には,可視光での見え方と同じく「Cリング」と「カッシーニのすき間」が,「Bリング」と「Aリング」よりも暗く観測されていた。

土星の自転軸は公転面と大きく傾いており,太陽に対するリングの開き具合は約15年周期で大きく変化する。地球での季節変化と同じく,太陽光の差し込み方が変わることで粒子の温度が変わる。また,地球からリングを見通した時の粒子の密集度も,リングの開き具合に応じて変わる。リング粒子の温度や見かけの密集度が変わることで,中間赤外線でのリングの輝き方が変化し,結果として明るさが逆転することもあるとしている。

今回すばる望遠鏡は,可視光では常に暗い「カッシーニのすき間」や「Cリング」が,中間赤外線では明るくなることがあるという現象を明らかにした。今後は探査機と地上望遠鏡のそれぞれの特長を活かしてデータを蓄積し,リングの性質をさらに詳しく調べていく。

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