エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ(NTT-AT)とアイレック技建は,下水道などライフライン管路の施工技術である小口径管推進工法・エースモール工法に使用する新たな位置計測システム(光掃引方式位置計測技術)を開発した(ニュースリリース)。
このシステムは,日本電信電話(NTT)が通信用に開発した電気光学結晶KTN(タンタル酸ニオブ酸カリウム,KTa1-xNbxO3)の製造技術とその結晶を用いた高速波長可変レーザー技術を応用したもの。
都市部において道路下に管路を構築する場合,地下にライフラインが複雑に張り巡らされているため,道路を掘り返すことなく管路を構築できる非開削推進工法が用いられている。
内径700mm以下の管路を非開削で布設する工法を特に「小口径管推進工法」と呼び,主に下水道設備の構築に使用されているが,新たな管路を構築する場合,既存のライフラインを損傷しないように掘削機の位置を高精度に計測するトンネル位置計測システムが求められる。
このような位置計測システムとしては,掘削機に設置されたコイルの磁界を地上から検知する電磁法,ジャイロを用いて掘削機の方位を計測するジャイロ計測,トンネル内に設置したプリズムによりレーザー光を折角し掘削機までの距離と折角から位置計測するレーザ計測(Prism)等が用いられている。
開発したシステムは波長可変レーザーと,レーザーから出射された波長掃引光を回折格子により波長に対応した角度に変換しレーザースキャンするユニットからなる。
このシステムでは,トンネルから離れた位置に波長可変レーザーを設置し,波長掃引光を光ファイバーを用いてトンネル内のユニットに供給する。ユニットからレーザー光を空間的にスキャンし,掘削機の方向(角度)を計測する。
さらに,波長掃引光は光変調器により光パルスとして計測対象に照射し反射光の戻る時間を計測することで距離計測を行ない,計測対象の角度と距離を計測し位置を決定する。
波長可変レーザーから供給されたレーザー光は,回折格子によって角度に変換され光スキャンされるため,モーター等の可動部品が不要であり,振動等が発生する屋外環境でも安定な計測が可能で,高い信頼性が実現できる。
さらに,波長可変レーザは2kHzの速度で波長掃引を繰り返しているため,短時間で高速のスキャンが可能であり,計測時間の短縮や繰り返し計測による精度向上が実現できる。
今回,ユニットの小型化も実現し従来技術では実現できなかった小口径管(250mm管)への対応が可能となり適用領域を拡大した。現在までに,非開削工法による下水道工事に試験適用し,位置計測システムとして高い精度を実現していることを確認しているという。
このシステムは,NTT-ATが製造し,アイレック技建が保有するエースモール工法に組み込んで推進施工に利用される。今後は,さらに中大口径の非開削工法にも適用する。
また,今回開発した高速波長可変レーザーによる位置検知方式については,今回の用途に加え,高速・高精度センシングシステムとして構造物の3D計測や高速の移動体イメージングなど幅広い用途への展開を目指す。