東工大,室温発光する円偏光スピンLEDを開発


東京工業大学は,室温で純粋な円偏光を発するスピン発光ダイオード(スピンLED)を世界に先駆けて開発した(ニュースリリース)。

円偏光は光学活性物質の選別,特に合成化学産業の分野で多用されている。円偏光はランプやレーザー光を分光器と様々なフィルターに通過させて作製されるが,この方法だと光源とフィルターの精密な位置合わせが必要であり,また装置全体の大型化や,円偏光回転向き切替え速度が遅いなどの問題がある。

今回,室温で純粋な円偏光を発するスピンLEDを世界に先駆けて開発した。このダイオードは,中間層に結晶性アルミナを用いている。電流が小さい時は自然光に近い偏光のない「無偏光」な発光だが,電流を大きくして発光強度を上げていくと円偏光の純度が上昇して純粋な円偏光に達する。

円偏光が増幅する原理は不明だが,この性質から,ダイオード中で発生した強い発光自体に円偏光を増幅する効果があると推定されるという。

これまで,円偏光のらせんの回転方向を司る電子の自転軸の向きを全て揃えるための原理開拓と,素子中の半導体と磁性体金属の接合で生じる非磁性物質の生成をなくす作製法の開拓が室温円偏光実現の最大課題と考えられてきた。

今回,独自開発した“結晶性アルミナ中間層”によって,大電流を流していても接合面での化学変化を抑えこむことに成功した。これによって,大電流下の発光で円偏光が増幅される現象を発見することができた。半導体を用いたスピントロニクス素子を室温で駆動することを疑問視する専門家は多かったが,これはその疑問を打ち破る成果だという。

現状,素子中の結晶性アルミナ中間層は大電流通電状態で1週間程度の耐久性しかない。今後は,その品質をさらに向上させるとともに,円偏光を発する超小型レーザーの実現を目指していく。その過程で,今回判明した円偏光が増幅する原理が解き明かされる可能性があるとする。

地球上のあらゆる生物を構成する分子は光学活性があるので,円偏光を利用すれば,これまで観察困難だった生命活動を詳細に観察できるようになるかもしれない。また,円偏光を使った暗号通信への応用も期待されるとしている。

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