富士通研究所は米トロント大学と共同で,データセンター内のサーバーとスイッチ間通信で用いられるイーサネット向け光モジュールにおいて,従来の55%の電力で動作する世界最小電力のリファレンスレス受信回路を開発した(ニュースリリース)。
ビッグデータ解析やクラウドサービスの普及に伴い,サーバーやスイッチ間で高いデータ転送能力を実現するため,光モジュールの高速化・高密度化が求められており,そのためには小型化と省電力化が必要とされている。
光モジュールを高速化して小型化するために,基準となるタイミングを発生させる水晶発振器が不要なリファレンスレス受信回路技術が開発されているが,従来のリファレンスレス受信回路では,入力データを読み取るタイミング周期のズレを検出する回路の消費電力が大きく,それに伴い発生する熱の問題から高密度化が困難という課題があった。
従来,データ読み取り周期のズレを検出するために,1ビットに対して4回の異なるタイミングで信号を検出する必要があり,この各タイミング生成回路の消費電力がモジュール全体の消費電力のうち大きな割合を占めていた。
今回,入力信号の振幅情報から読み取り周期のズレを検出することで,1ビットに対して1回と,データの伝送速度と同じ周期で動作可能な新しいタイミング抽出技術を開発した。その結果,タイミング生成回路を4分の1に削減し,リファレンスレス受信回路の消費電力を従来構成に比べて55%に削減,光モジュール全体の消費電力を従来の約70%に削減することに成功した。
この技術により光モジュールの省電力化が可能となり,その分高密度実装による高いトラフィック転送能力を実現し,データセンターの処理能力を向上させることができる。富士通研究所はこの技術について,2019年度の実用化を目指すとしている。