東工大,フレキシブルなテラヘルツカメラを開発

著者: sugi

東京工業大学の研究グループは,カーボンナノチューブを利用したフレキシブルなテラヘルツ帯撮像デバイス(カメラ)を世界で初めて開発した(ニュースリリース)。このデバイスを用い,注射器やペットボトルといった360度歪曲した物体に対しても,内部の破損・異物混入を瞬時に撮像することに成功した。また人体に装着したまま画像観測を行なうためのウェアラブルデバイスも製作した。

テラヘルツの周波数帯は電子技術(エレクトロニクス)としては周波数が高く,光技術(オプティスクやフォトニクス)としては光のエネルギーが低い。このことから,この周波数帯を活用する技術が十分に開発されておらず,他の周波数帯に比べて発振器や検出器という基本的な素子ですら発展途上という課題を抱えている。

また,電磁波の重要な応用であるイメージング計測では,一般に様々な形状の物体に対応する必要がある。そのためには,複数の視野から画像化する立体計測が必要だが,従来のシステムでは大型化する問題があり,テラヘルツ帯イメージング技術の実用化を難しいものとしていた。

研究グループは折り曲げ可能なテラヘルツ帯カメラを作製するために,分散液をフィルタリングすることで,大面積かつフレキシブルで容易に加工ができるカーボンナノチューブフィルムを材料に選定し,pn接合の作製を試みた。従来,カーボンナノチューブフィルムでは膜厚が㎛程度以上の厚さになると,既存のゲート電極を用いた電界制御ではpn制御ができないという問題があった。そこで,イオン液体を用いた電気二重層トランジスタを作製することで,100㎛という厚いカーボンナノチューブフィルムにおいてもpn制御を行なうことができた。

pn接合を用いることで4倍の高感度化を達成し,フレキシブルデバイスに必要な厚み(機械的強度)と感度の高さを両立することが可能となった。この成果は,テラヘルツデバイス応用にとどまらないもの。さらに,カーボンナノチューブから外への熱放出を抑制することで,約3倍感度が上昇した。以上の3点の工夫(電極構造,pn接合,熱放出抑制)により,格段の検出感度向上を達成した。

さらに,多数の検出器をアレイ状に集積化し,フレキシブルかつウェアラブルなテラヘルツ帯カメラの作製,ならびにテラヘルツイメージング検査応用を行なった。これにより,紙や半導体に隠された金属や,プラスチックケースの内部構図の非破壊・非接触検査ができた。

また,マルチビュースキャンは,注射器のような歪曲した形状の物体であっても,フレキシブルカメラを用いることで360度の全視野を瞬時に画像計測することができる。従来は複数台のカメラを用いていたが,この技術により大規模な測定系なしで全方位破損検査が可能になった。さらに,人体に装着可能なウェアラブルカメラの開発にも成功。他にはない長所であり,医療検査に向けた強力な手段となることが期待できるとしている。

今後,検出器を高感度化・高集積化することで,より高精度のテラヘルツイメージングが可能となり,食物・医薬品への異物混入検査,農作物のモニタリング,ウェアラブルな生体検査といった様々な分野において,既存の技術では成し得ない恩恵や革新をもたらすとする。また,日常生活でもリアルタイムで検査可能な“ウェアラブル医療端末”としての活用も可能になるとしている。

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