富士通研,体操判定用レーザーセンサーを公開

富士通研究所(富士通研)は,今年の5月に発表した日本体操協会との採点支援技術の共同研究で用いる3Dレーザーセンサーを,10月20日に行なった同社研究開発戦略説明会にて公開した。

この共同研究は,ひねり回数の増加など年々動きが複雑・高速化する体操競技において,人間の目視による採点が困難になる場面が出てきたことから,日本体操協会が富士通研および富士通と,3Dセンサーとデータ処理により採点を支援する技術を共同開発することで合意したもの。

従来は人間の動きをデータとして取り込む技術として,競技者にマーカーを取り付けて複数台のカメラで撮影するモーションキャプチャーがあったが,実際の競技においてマーカーを付けて演技することは現実的ではなく,研究には遠隔から非接触にてこうした動きをセンシングする技術が必要だった。

これに対して富士通研は,TOF(Time Of Flight)方式の3D LiDAR(Light Detection and Ranging)センサーを開発した。これは同社が自動車向けに数年前より開発していたものを応用したもの。近赤外線レーザーをMEMSミラーで走査し,横方向に320点,240レイヤーの点群データを30fps(1秒間に約230万点)で取得する。

サイズは約200(H)×70(W)×120(D)mm。ブラッシュアップすることでさらに半分くらいのサイズになるとしている。センシングエリアは15m。体操競技で最も広い面積を使う床運動でも競技エリアの端に2台のこのセンサーを設置すれことでカバーできる。

また,LiDARの特性として検出する物体との距離が離れるほどレーザーが拡散するため点群データは粗くなるが,このセンサーは対象物が離れるとその距離に応じてミラーの振り角を制御し,同じ点群密度で計測することが可能だという。

これまで点群を用いた深度センサーには,Microsoft社のKinectのような比較的近距離で用いるものや,自動運転の実証実験で用いられるVelodyne社の製品のように大型のものはあったものの「こうした中距離用のものはなかった」(担当者)としており,新たなカテゴリーのセンサーとなる可能性がある。

同社ではさらに,人工知能を用いた判定処理も実現している。先にデータベースとしてモーションキャプチャーを使って技の動きをデータベース化しておき,得られた点群データを照合して関節の位置や動きを推定し,どんな技をどんな精度で行なっているかを自動的に判定する。現在のところ,あん馬での技の検出や採点が可能になった。今後,この技術を磨いて実際の試合で判定の補助が可能になるレベルを目指す。

同社ではこの技術が競技の「見る・する・支える」に役立つとしている。技の名前と採点をリアルタイムに表示することで,見る側であるテレビ視聴者は競技をより楽しめ,する側の競技者は自分の動きをデータ化することで,好調時・不調時の動きの違いなどを練習に役立てることができる。また,審判は技の種類や完成度をデータとして得られるので,迅速かつ正確な判定を支えることになる。

富士通は日本バスケットボール協会,ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグともパートナー契約を締結しており,既に富士通の女子バスケットボールチームにて選手の動きのデータ収集を始めているという。

同社ではまず,将来のセンシング社会において基本となる人の動きの検出・分析技術をベースとして構築した上で,将来的には自動運転などの他のアプリケーションにも応用していきたい考えだ。まずは来年度に実証実験を行ない,東京オリンピックに向けて実用化を目指す。

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