日本電信電話(NTT)は,高速電子デバイスと信号処理を組み合わせた高速信号を生成する新技術を用いて,イーサネット等で使われている光強度変調方式で250Gb/sの短距離光伝送に成功した(ニュースリリース)。
イーサネット等のデータセンター等で使われる短距離光伝送では光部品の構成が簡単な強度変調方式が用いられる。送信する情報を変換して光を変調するための信号パターンに変換するデジタル信号処理チップの出力部分のCMOS電子回路の速さには限界があり,それより高速な強度変調信号となる毎秒250ギガビットの信号を作り出すことは困難だった。
今回NTTが開発した「帯域ダブラ技術」は,DACの限界速度の影響を受けないようにチップ内の信号処理(前置信号処理)により,入力信号をDAC出力限界速度以下の低速な信号に変換した2系統の信号として出力する。その後,デジタル信号処理チップの外部に接続したCMOS回路よりも高速動作が可能な化合物半導体の電子回路(AMUX)を用いて1つに合成することで,高速な信号の出力を実現し,上記のボトルネックを解消している。
さらに,AMUXで生成が予想される余分な信号について,AMUXで合成されるときに打ち消しあうように逆算して前置信号処理で2系統の信号を設定する手法で,正確な高速信号の生成を可能にしている。
今回,帯域ダブラ技術により,周波数帯域60GHzを実現し,これにADSL等で用いられる光の強度の複雑なパターンを用いて一度に多くの情報を送る方法(DMT変調)を用いることで,250Gb/sで10kmの光伝送を世界で初めて実現した。
今回の実験の成功により,4波長を多重化することで1Tb/s級の短距離光伝送をはじめとした大容量光通信など高速変調信号が必要とされる様々な分野への展開が期待されるとしている。
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