京都大学と東京工業大学,名古屋工業大学らは共同研究により,新しい2価スズ(Sn(II))酸化物系光触媒材料を発見した(ニュースリリース)。
同グループでは様々な結晶構造を持つ約3500種のSn(II)複合酸化物を対象に,量子力学に基づいた第一原理計算を系統的に実施することで,熱力学的安定性や物性を予測し,高効率にスクリーニングした結果,SnMoO4を新しい光触媒材料の候補物質として見いだした。
この物質はこれまでに合成報告がなく,結晶構造も未知だったが,同グループではピンポイントでの物質合成と光触媒活性の実験に取り組んだ。
合成した粉末試料を用いて光触媒活性の評価を行なった結果,触媒無添加での光分解反応(photolysis)に比べ,SnMoO4が従来から高い光触媒活性が報告されているβ-SnWO4と同程度以上の顕著な光触媒活性を持つことが明らかとなり,この物質が計算により予測されたとおりの結晶構造を持ち,優れた光触媒特性を示すことを実証した。
この研究の成功は,このような理論計算主導での物質探索の有効性を確認したもの。今後は,光触媒分野に限らず,汎用的・効率的な材料開発技術としての重要性を大きく増すものだとしている。
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