東北大学の研究グループは,ジグザグ型エッジを有するグラフェンの作製に成功した(ニュースリリース)。この結果は,分子の合成によってグラフェンのエッジ形状を制御した世界初の成果であり,グラフェンを活用したデバイス作製に向けた大きな一歩となるもの。
グラフェンは,炭素原子が蜂の巣状に並んだ厚さ原子1層分の物質で,電子移動度が高いため,透明導電膜や超高速トランジスタなどの応用に向けて,非常に活発な研究が展開されている。
特に,ナノスケールサイズで細線(リボン)状にしたグラフェンナノリボンは,エッジの形状がジグザグ型かアームチェア型かで,電気伝導性や磁性などの物性が大きく異なることが期待されている。しかし,ジグザグ型のエッジの作製はきわめて難しく,2種類のエッジを作り分けることができないため,未だに物性の違いを検証することができなかった。
研究グループでは,分子の合成によってエッジ制御を行なうため,二臭化ビアントラセン化合物という分子を銅基板上にばらまき,500度で10分程度基板を保った。その後,原子1つ1つが識別可能な走査型トンネル顕微鏡を活用して生成する分子を観察すると,ジグザグ型のエッジを有するグラフェンナノリボンが生成していることを確認した。
研究グループはこの成果によって,グラフェンのエッジの形状による物性の違いを検証するなどの研究を進めることが可能となり,グラフェンを使った新規エレクトロニクスデバイスやスピントロニクスデバイス創製につながると期待している。今後,様々な長さ,幅,エッジ状を有するグラフェンナノリボンの合成を行ない,新規物性開拓と実用研究に取り組む。
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