コニカミノルタは,事業化を進めてきたフレキシブル有機EL照明パネルについて,ロール・トゥ・ロール方式による生産工場を建設しており,今年夏には竣工,秋より本格的な生産/販売を始めると発表した。ロール・トゥ・ロールによる有機EL照明を量産するのは, 同社代表執行役社長の松﨑正年氏によれば世界で初めてだという。
新工場は山梨県中央市にある同社甲府サイト内に建設しており,投資額は約100億円。生産能力はパネル約100万枚/月となっている。既に一定の顧客を掴んでいるとしており,明言は避けたが自動車メーカや電気機器メーカ等が含まれるようだ。他社に先行して市場の主導権を握る同社の「ジャンルトップ戦略」でスタートダッシュをかけ,2020年に3,000憶円超(同社予測)となる有機EL照明市場において,400~500憶円の売上を目指す。
生産するパネルは白色タイプ(150×60mm:厚み0.35mm)と,任意に変化させることができる調色タイプ(50×30mm:厚み0.29mm)の2種類で,曲げ半径はそれぞれ10mmとなっている。調色タイプは色を変化させることができる製品で,RGB 8bitで1,600万色の表示が可能。その色域は市販の液晶パネルより広いとしている。発光効率や光束,寿命については,顧客の求める仕様によって変わってくるとし「カタログ上問題の無い数値」とするにとどめた。
価格についても同様に公表しなかったが「プラスチック基板の有機EL照明を量産できるのは我々だけ。これは付加価値だと考えており,ガラス基板の有機EL照明よりは高い価格となる」(常務執行役アドバンストレイヤーカンパニー長:白木善紹氏)とし,先行する他社のガラス基板有機EL照明との差別化に自信を見せる。
ロール・トゥ・ロール方式の製造工程には,全長2kmのプラスチックロール基板を使用する。製造プロセスには塗布工程以外にも蒸着工程が含まれており,製品によって適した生産法を柔軟に使い分けるようだ。生産効率を追求するには全行程を塗布とする方が有利だが,市場が黎明期にある現在,今回の塗布/蒸着混合プロセスでも十分な生産量を確保できるとして,全工程の塗布化にはこだわらない考えだ。また有機材料についても,同社が開発を進めてきた燐光材料だけでなく,必要に応じて外部調達する蛍光材料も使用するという。
今回のロール・トゥ・ロール方式が実現したのは,既存事業である光学フィルムをベースとして,同社が川上から川下まで一貫したプロセス/材料を開発してきたことがある。必要に応じて他社製品も用いるものの,有機材料はもとより,高い防水性を持つバリアフィルムや封止材料,光取出し構造,透明電極といった技術やデバイスを一通り自前で用意しており,工程間の微妙な調整や材料の相性などが求められるこの生産方式を可能にした。
同社は光学メーカとしての歴史も長く「発色など,化学メーカにはできない製品を作ることができる」(松﨑氏)として万全の構えを見せる。一方で,まだ実際にロール・トゥ・ロールを用いた製造は行なっておらず,今回の発表で披露した試作品も従来の工程によるものだという。工場が竣工する夏から秋までのわずかな時間に,世界初となる製造技術が問題なく稼働するのか,製品同様こちらも注目される。
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