月刊OPTRONICS 特集序文公開

高放射率0.995が切り拓く高精度温度校正技術─非接触温度計のための次世代平面黒体炉─

著者:チノー 清水孝雄

 非接触温度計の精度は,校正に用いる黒体炉の放射率に大きく依存する。しかし,一般的な平面黒体炉では広開口と高放射率の両立が困難であった。本稿では,表面微細構造を用いた新しい黒体化技術により放射率0.995以上を実現した平面黒体炉と,その校正精度向上効果について紹介する。

1.はじめに

 非接触温度計測は,物体から放射される赤外線を利用して温度を測定する技術であり,製造プロセス,設備診断,建築評価,医療用途など,幅広い分野で利用されている。特に近年では,感染症対策としての体温スクリーニング用途において急速に普及し,その温度測定精度への要求は一層高まっている。

 非接触温度計の測定精度は,校正に用いる基準放射源に大きく依存する。一般に黒体炉が基準として用いられるが,理想的な黒体(放射率ε =1)は現実には存在せず,いかに放射率を1 に近づけるかが重要な設計課題である。放射率が低い場合,対象物自身の放射だけでなく,周囲環境からの反射放射が測定信号に混入し,誤差の増大および再現性の低下を招く。一般的な平面黒体炉における高放射率化は主に塗料改良や形状最適化によって検討されてきたが,放射率0.99以上を安定的に達成する手法は限定的であった。本開発では,産業技術総合研究所(産総研)が開発した表面微細構造による黒体化技術を平面黒体炉に適用し,平面形状を維持したまま高放射率化を実現した1, 2)

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