東京都立産業技術研究センター(都産技研)と東京大学は,共同研究により有機薄膜太陽電池に用いる新規有機半導体材料を開発した(ニュースリリース)。
環境に配慮したクリーンエネルギーの開発が求められる昨今において,太陽電池は重要な研究分野であり,なかでも有機薄膜太陽電池は,現在主流のシリコン型(無機型)太陽電池に比べて軽量性や透明性,低コストなどのメリットがあるため,世界中で研究・開発が進められている。
有機薄膜太陽電池は2種の有機半導体材料(ドナー・アクセプター)を組み合わせることで電力を発生する。しかし現在多用されているドナー材料は精製が難しいため,製品化への課題とされていた。
今回研究グループは,ポルフィリン骨格の中心にマグネシウム(Mg)を配位させた新規ドナー材料を4種類開発した。4種の化合物は,ポルフィリン骨格の上下のAr部位にそれぞれ異なる官能基を導入している。いずれの化合物も,液体クロマトグラフィーを用いた精製により高純度の目的物を容易に得ることができたという。
また,開発した材料は,可視光から近赤外領域にまで及ぶ幅広い波長の光を吸収することがわかった。これにより太陽電池として光吸収効率の更なる向上が見込まれる。
さらにAr部位に導入した官能基の種類が化合物の電気化学特性に影響を与えていることを明らかにした。電気化学特性は太陽電池の性能を決める重要な要素のため,電気化学特性を最適化することでより高効率な太陽電池の実現が可能となる。開発した材料を用いて太陽電池素子を作製し,化合物(Ar=4-n-hexyl-C6H4)を用いた場合に最適条件で5.73%の変換効率を達成した。
研究グループは,有機薄膜太陽電池用ドナー材料としての活用に加え,有機ELや有機トランジスタなど,他分野での有機半導体材料として,開発した材料の応用展開も試みる予定だとしている。