大阪大学の研究グループは,紙を用いてフレキシブルな電子ペーパーを作製することに成功した(ニュースリリース)。
エレクトロクロミック(EC)ディスプレーでは,透明電極に電圧を印加することによって,液体電解質を介したEC層へのイオンや電子の受け渡しを行ない,着色と消色を実現しする。しかし,従来のEC素子には,液体電解質の漏れを防ぐ封止が必要,薄膜加工が困難,電解質の揮発による性能劣化が避けられないといった課題があった。
研究グループは,不揮発性のイオン液体電解質(1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート([Bmim]BF4))を水素結合によってセルロース繊維の表面に固定化することで,「紙の電解質」を調製することに成功した。
さらに,セルロースナノファイバーを用いて作製した透明な紙の表面に,エレクトロクロミック機能を有する導電性高分子ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(4-スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)を均質にコーティングすることにより,「紙の透明EC電極」を作製した。
最後に,これらを重ね合わせることによって,新しいEC素子を作製することに成功した。このEC素子は,上述の課題を解決するだけでなく,全て紙ベースであるため,折り曲げも可能な優れたフレキシブル性を有する。また,白くて反射率の高い紙の電解質は,EC表示層の視認性向上に寄与する。今回作製した新しいEC素子は,紙でつくる真のフレキシブル電子ペーパーとして期待されるとしている。
研究グループは,これまでに,紙ベースのメモリ,トランジスタ,アンテナ,スーパーキャパシタといった様々な電子デバイス素子を開発することにも成功している。これらの技術を統合すれば,将来,紙の電子書籍も実現することが期待される」。