レーザーとの融合・複合化へ ─JIMTOFに見る工作機械の開発トレンド

■ヤマザキマザック,マルチレーザー加工ヘッドを搭載した複合加工装置を開発
ヤマザキマザックのマルチレーザー加工ヘッドを搭載したレーザーAM複合加工装置
ヤマザキマザックのマルチレーザー加工ヘッドを搭載したレーザーAM複合加工装置

ヤマザキマザックは,内閣府が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の成果であるマルチレーザー式金属積層技術(M-LDM技術)を実用化した「INTEGREX i-200S AM(M-LDM仕様)」を開発した。

同社は,大阪大学接合科学研究所・准教授の塚本雅裕氏がリーダーを務めるSIPのテーマの一つである「高付加価値設計・製造を実現するレーザーコーティング技術の研究開発」に参画しており,今回開発した装置に搭載したM-LDM技術は,塚本氏ら研究グループが開発したものだ。

マルチレーザー加工ヘッドの最大の特長は,積層造形用粉末材料を中央部から供給し,6本のレーザー光を照射するという点だ。これにより,積層造形用粉末材料が効率よく溶融されるため,従来に比べて微細なAM加工や,母材に対する熱影響の少ないAM加工,さらには加工ヘッドを旋回させた5軸自由曲面でのAM加工を可能にする。

装置は,加工領域への制限やレーザー装置への粉じんなどの影響を抑制させるため,ガントリー駆動式AM加工ヘッドの機械構成となっている。光源はIR-半導体レーザーを採用,出力は300 Wで,1本あたり50 Wを出力させる。積層厚は0.1~0.5 mmという。

同社はまた,米国で生産しているMCをベースとした「VC-500AM」も出展した。この装置では,1 kWのファイバーレーザーを光源に採用しており,加工ヘッドはドイツ・HYBRID Mnufacturing Technologesが開発した造形ヘッドを搭載している。

■シチズンマシナリー,従来の自動旋盤にレーザー加工装置を融合
シチズンマシナリーのレーザー複合加工装置
シチズンマシナリーのレーザー複合加工装置

シチズンマシナリーは,従来自動旋盤による旋削加工装置を展開していたが,新たにレーザーを融合・複合化させた「L20」の販売を開始する。想定しているのは医療機器部品の製造だ。

レーザーは200 WのCWファイバーレーザーを搭載しており,SUSやチタンといった材質の高品質な加工を可能にする。レーザーによる加工では対向壁の焼き付けの原因となるドロス(溶融時の付着物)を抑制させるため,水を吹きかけながら加工(ミスト加工)する仕組みとなっている。

JIMTOFにおけるデモでは,パイプ加工を展開。装置に搭載している給材機から加工対象材料を搬送させ,外径・内径をバイト(切削)加工し,レーザーによって溶断や精密加工を行なう。レーザー加工では,切削工具の破損や摩耗がなく,これまでエンドミル加工では難しかった鋭角部を持つ穴加工を可能にする。加工厚は1 mmの材料まで加工することができるとしている。

■ファナック,複合加工向けレーザーの販売を推進へ
ファナックのファイバーレーザー
ファナックのファイバーレーザー

ファナックはJIMTOFにおいて1 kW出力のファイバーレーザー発振器をラインナップに加えると発表した。2017年にも販売を開始するという。同社は古河電気工業との合弁会社FFレーザーの事業をスタートさせ,ファイバーレーザーの基幹部品の製造を行なっている。同社のファイバーレーザーは国内では小池酸素工業と日酸TANAKAが採用しており,海外では中国・台湾,ドイツ市場に供給しているとしている。

同社が強みを持つのはCNCとサーボモータシステムで,これらとレーザーを同期させることで加工速度・精度が高まる。同社によれば,スピンドル加工においてファイバーレーザーでは120 m/minの加工速度を可能にするという。最新のCNCではレーザーと機械加工の複合化にも対応させているとし,今後は複合加工装置へのアプローチを展開させるとしている。

工作機械を巡ってはAM技術の登場によって,新たな装置の開発が活発化している。米国,欧州では製造分野へのAM技術の採用を積極的に推し進めており,工作機械メーカーはこれに対応するかたちで製品化に取り組んでいる。AM技術が製造分野の高付加化価値化を支える一方,高付加価値・高品質加工の実現を可能にするレーザーの導入が今後も進むものと考えられることから,工作機械市場におけるレーザー需要の伸長が期待されるところだ。◇

(月刊OPTRONICS 2017年1月号掲載)