■量産化技術の確立へ
ロボホンは,ハードウェアとして完成の域に達しているというが,それまでに幾度となく試作を重ねてきたという。景井氏は「量産技術の確立において,特に駆動部品であるサーボモーターとレーザープロジェクターの品質を均一化させるかが課題となった」と語る。サーボ―モーターは並木宝石精密と共同で開発を進めたもので,ロボホンの動作に関わる重要な部品となるが,量産品では個体差のない組み立てプロセスが求められたという。
一方,レーザープロジェクターは米国Microvisonと共同開発したもので,光学モジュール内のレーザーの反射や散乱により発生する迷光の抑え込みや,量産における部品バラつきを吸収する光軸調整技術の確立に取り組んだという。景井氏は,「レーザーを継続して照射するため,経年劣化が問題となる。そのための試験を十分に行なった」としているが,従来の水銀ランプ等を光源としたプロジェクター比較すると,レーザーでは,ランプ寿命末期に発生するフリッカーノイズが起こらないという特長を持つ。
■導入した光技術―注目のレーザープロジェクター
ロボホンには写真・動画撮影用として一般的なスマートフォンなどに搭載されている,800万画素のCMOSカメラが採用されているほか,感情表現(リアクション)を行なう目の周囲と口元にはLEDが内蔵されている。ちなみに,目の発光については黄色が音声待ちの状態,緑色が音声認識,紫色が音声の不認識という発光色の違いでステイタスを判別させている。また,怒っている発話は赤など発話の内容に合わせて感情表現も行なっている。つまり,発話を認識して発光色を変化させるという仕組みになっている。
今回,最も注目すべきところはレーザープロジェクターだが,頭部に収めるために小型化を可能にする半導体レーザーによるプロジェクターが採用された。景井氏は「それでも構造設計には苦労した」という。レーザープロジェクターは走査型で,レーザーの波長が赤:638 nm/緑:518 nm/青:448 nm,解像度が1280×720画素のHD相当,輝度が17 lm,フレームレートが60 fps,表示色数が16 bit Colors(65,536色)の仕様となっている。
一般的にレーザープロジェクターは,LEDプロジェクターに比べても光利用効率が高いのを特長とする。また,省エネ性能も高く,高輝度,指向性が高いことによるフォーカスフリーも享受することができる。さらに色再現範囲も極めて広い。景井氏は「明暗の差が大きい場所でも,はっきりと視聴が可能な色づくりを行なった。またレーザー照射のため,凹凸のある面(スクリーン)にも投影することができる」としている。投影サイズは最大50インチまでを確認済みという。さらに,画質補正エンジンによる画質補正が行なわれており,実際の投影を見ても違和感が全くない高コントラストな映像が映し出されていた。
レーザーを利用する応用製品の広がりが期待される中にあって,安全性の問題もある。そのため,ロボホンではレーザープロジェクターの起動において,「顔認証によって使用を可能にするといったセキュリティ機能を設けている。また声紋認証も機能に加えており,二重のセキュリティにも対応している」(景井氏)としている。
一方で,レーザー製品に対する規制緩和も進んでおり,ロボホンにおいて,当初は安全面の配慮から,レーザープロジェクターの起動時は下方に投影させるところからスタートしていたが,現在は最初から正面や,手に持った状態でも投影できるようにアップデートされてきているという。
■今後の展開とレーザープロジェクターの普及に向けて
コンシューマー向け製品の開発においてレーザーの利用を訴求する意味でも,ロボホンにレーザープロジェクターが搭載されている意義は大きいものがある。景井氏は,「ロボホンの販売状況に関しては法人向けに販売も開始しているが,一般ユーザーが大半を占めている」という。
今後については現在,2号機を視野に入れた次世代機の開発に向けては検討中としているが,ロボットにおける機能向上とさらなる小型化をアプローチしていくと想定した場合,レーザーをはじめとする各種デバイスのさらなる技術進展が期待されている。◇
(月刊OPTRONICS 2016年12月号掲載)