ディスコ,SiCウェハーの新加工手法“KABRA”プロセスを開発 ─SiCデバイスの低コスト化に道!

電力変換や制御を行なうパワー半導体デバイス用材料の一つとして,SiCに注目が集まっている。SiCは絶縁破壊電界強度やバンドギャップがSiに比べて数倍高く,電力損失が少ないという優れた特性を持っているため,機器の省エネ化,小型化にアドバンテージがある。SiCパワー半導体デバイスは,鉄道やエアコンなどに組み込まれており,実用化が進んでいる。しかしながら,高価であることが普及のネックとされている。

半導体製造装置メーカーのディスコは,SiCパワー半導体デバイスの低コスト化につながる,レーザーを応用した新たな加工手法を開発した。“KABRA”プロセスと呼ぶもので,SiCインゴットの上面からレーザーを連続的に垂直照射することで,光吸収する分離層を任意の深さへ扁平状に形成させ,この分離層を起点に剥離,ウェハー化するというスライス加工法だ。

※Key Amorphous-Black Repetitive Absorptionの略

現在,SiCインゴットからウェハーを切り出す方法は,ダイヤモンドワイヤーソーによるものが主流だが,SiCは硬質なため,加工に時間がかかること,さらに切断部分のロスが多く,1本のインゴットから取り出せる枚数が少なくなることが課題となっている。これらがSiCパワー半導体デバイスの生産時におけるコスト高の要因となっている。

同社によると,「SiCパワー半導体デバイスのコストの大半は,SiC材料を結晶成長させるプロセスと,ウェハー化するための加工プロセスにかかるコストで占められている」という。このため,ウェハーメイキングのプロセスには,一層のコストダウンが求められている。これを実現可能にするものとして期待されているのが,今回同社が開発したKABRAプロセスだ。


図1 改質痕とKABRA層の形成方向の違い(断面図)
図1 改質痕とKABRA層の形成方向の違い(断面図)

同社は,半導体チップなどの切り出し加工法として,レーザーステルスダイシングを製品化しているが,この手法はレーザー照射によって形成される改質痕が,原理的に縦長に伸びるのを特徴としている。これに対し,KABRAプロセスは,剥離の起点となる分離層(KABRA層)を水平に形成する(図1)。この状態はレーザーを集光させることにより,SiCをアモルファス状態のシリコンとカーボンに分離させ,分離後のアモルファスカーボンへ効率的に光吸収させることで起こる。


図2 φ4インチの剥離後のウェハー(上),φ6インチの剥離後のウェハー(下)
図2 φ4インチの剥離後のウェハー(上),φ6インチの剥離後のウェハー(下)

これに関し,同社は,「分離層は左右に残留応力が働くことから,面上から1回のレーザースキャンで,横方向に約1 mm割れる。つまり,1 mm分のレーザースキャンを必要としない。例えば,φ4インチ(100 mm)のインゴットであれば,100回のレーザー照射で剥離する」としている(図2)。