kWクラスのファイバレーザ加工機市場の拡大が期待されている。省エネ設備導入に対する国の補助金支援制度の後押しもあり,レーザ加工機メーカの販売へのアプローチも活発化している。
ファイバレーザ加工機市場は,国内では5 年ほど前から立ち上がり,参入メーカも増えた。現在,アマダ,三菱電機,ヤマザキマザック,コマツ産機,村田機械,ドイツ・トルンプ,イタリア・サルバニーニなどが製品化しており,薄板鋼板の加工向けを中心に導入が進んでいる。
加工性能は格段に上がり,軟鋼やステンレス,アルミの厚板においてCO2レーザと同等の切断加工が実現されている。しかし,切断面の品質には課題が残る。ファイバレーザ加工機は,おおむね板厚3.2 mmを境にCO2 レーザ加工機とのすみ分けがされているが特に薄板では加工スピードに差が出る。また,銅や真鍮などの高反射材料に対する加工性能も高い。
去る7月15 ~18日の4日間にわたり開催された,プレス・板金・フォーミング展「MF-Tokyo 2015」では,ファイバレーザ加工機の出展が多く見られたが,出展社へのヒアリングではその市場について,「ファイバレーザ加工機が占めるシェアはレーザ加工機全体の10%程度ではないか」(大手加工機メーカ)との声が聞かれた。しかし,加工性能の向上により,さらに適用分野が広がる可能性があり,今後の市場に伸び代があると考えることもできる。
参入メーカにみるレーザ加工機の製品動向だが,アマダは2 kWのファイバレーザ加工機において,25 mmの軟鋼をレンズや加工ヘッドを取り替えることなく,ビーム形状を変化させるだけで切断可能な技術を開発している。同社はまた,半導体レーザ(LD)で直接加工が可能な加工機も開発。国内市場への投入を計画している。
三菱電機は出力6 kWまでのファイバレーザ加工機をラインナップしている(写真1)。発振器は米国IPG フォトニクス製だが,加工機との親和性を高めるための独自技術をIPGフォトニクスと共同で開発したという。励起用LDはシングルエミッタで,放熱性が高いのを特長としており,これにより長寿命にもつなげている。
ヤマザキマザックは4 kWまでのファイバレーザ加工機をラインナップ(写真2)。パイプ加工機で納入実績を伸ばしている同社だが,こちらはCO2レーザによるもので,今後ファイバレーザを採用するかが注目される。
コマツ産機は2 kWまでのファイバレーザ加工機を製品化しており,二次元タイプのほか,3次元加工機についてもファイバレーザを採用している。発振器は自社開発したもので,薄板用途をターゲットとしている(写真3)。
村田機械はテーブルサイズが1,525× 3,050 mmという大型複合機を開発している。発振器の出力はIPGフォトニクス社製の5 kWを搭載。同社は2.5kWの2次元ファイバレーザ加工機を製品化しているが,これまで約30 台を納入しているという。
トルンプは,ファイバ伝送式ディスクレーザを主力としている。国内市場では8 kW出力のディスクレーザ加工機の投入を予定している(写真4)。ステンレスで40 mm,アルミで25 mmの板厚加工を可能にするという。
サルバニーニは国内市場に約4 年前から参入しているが,これまでの2kWと3 kWに加え,4 kW出力のファイバレーザ加工機を投入する計画(写真5)。加工機の特長は加工ヘッドがコンパス形状となっており,これによって複雑で精細な加工をY軸方向だけで対応可能にする。
ファイバレーザ加工機は普及期に突入しており,今後の市場動向が注目されるところ。一方で,発振器市場に目を転じると,IPG フォトニクスがkWクラスの市場で寡占している。国内では古河電気工業,フジクラなどが製品化しており,このうち,古河電気工業はファナックと共同出資会社「FFレーザ」の設立を発表した。
FFレーザではファイバレーザの基幹部品となる高出力レーザダイオードモジュールを開発する。ファナックは自動車分野を始めとする様々な製造分野において,レーザと組み合わせたロボットシステムでも強みを持つ。こうした分野における現状のレーザからファイバレーザへと代替需要が見込める可能性もある。いずれにしても今後の展開に注目が集まっている。◇
掲載:OPTRONICS(2015)No.9