低損失で確実なMCF同士の接続や,SCFとの集合や分岐が可能なことを示した今回の展示の中で,記者がブレイクスルーが必要だと感じたのは増幅器だ。デモで使用されたマルチコアEDFAは各コアごとに増幅を行なうため,今回の増幅器には7台のEDFAが内蔵されており大型だ。消費電力も大きく,特に給電の必要がある海底ケーブルでは大きなネックとなる。今後,さらにコア数を増やしたMCFが登場することを考えてみても,増幅器の小型化は喫緊の課題だろう。
これに対して,すべてのコアを1台のEDFAで増幅しようとする一括励起型EDFAの研究が進められており(古河電工リリース),昨年までに一括で2コア増幅が実証されている。この技術の進捗がMCFの実用化の大きなカギの一つになりそうだ。
MCFの実用化はNICTが委託事業として進めており,2010~2013年にはMCFの設計・製造・評価技術の確立を目指した「i-FREE」,2011~2016年は,さらにMCFの接続・光増幅・伝送技術を目標とした「i-Action」が,企業や大学と共に行なわれている。今回の展示ははこれらの成果によるものだ。
そして2013年からは,100km以上のMCF製造・1Pb/s以上の大容量化・国際標準化を目標とした「革新的光ファイバの実用化に向けた研究開発」(呼称未定)が始まっており,いよいよMCFが次世代通信網の本命となるかが問われる。
【関連書籍】
光通信技術の飛躍的高度化
A5判 330頁 ハードカバー
中沢 正隆、鈴木 正敏、盛岡 敏夫 編