マルチコアファイバを用いた光通信技術,実現は目前に

情報通信研究機構(NICT)は,同機構の研究成果・内容を公開する「NICTオープンハウス2013」を11月28日,29日に開催した。会場内では,1本の光ファイバに7本のコアを入れた「マルチコアファイバ(MCF)」を用い,7つのチャンネルで同時に通信を行なうデモが行なわれた。MCFは,帯域がひっ迫する通信インフラを救う有効な技術の一つとして注目されており,その研究は日本がリードしている。

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デモに用いた伝送路の外観

今回のデモでは,MCFの開発に参加する国内のファイバメーカ5社(三菱電線,日立金属,古河電工,住友電工,フジクラ)がそれぞれMCFを用意。各社のMCFを入力側から10kmずつ,計50kmを直列に繋ぎ,さらに増幅器を挟んで出力側にも同様に50kmのMCFを接続した。MCF同士の接続は融着によって行なわれた。MCF用の融着機は研究用として既に製品化されており,実験レベルでは接続損失0.2dB以下を達成するなど,低損失の接続を実現している。

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MCFの概要

デモでは各社のMCFを直列に繋いでも大きな損失は無く,各社共に高いレベルの製造技術を持っていることを示した。実際にこのデモに参加したNTTの担当者も,各メーカによるMCFの性能に偏りは見られないとしている。今回のデモでは各社10kmのMCFを2本ずつを用意したが,メーカの能力としては50~100kmのMCF(7コアの場合)を製造できるという。

7コアMCFの場合,直径180㎛の光ファイバに7本のコアが6角形状に配置してあり,各コアの感覚は45㎛となっている。このコア同士が近づきすぎると,互いの信号が干渉するクロストークの原因となるため,MCFの製造時にはコアの距離を一定に保つことが大切になるが,以前はこの距離を保ったまま長いMCFを製造するのが難しいとされてきた。

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MCFのプリフォーム 7本のコアが入っており,これを引いてファイバにする
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接続された5社のMCF