街灯というものに,都会の人ならば賑やかな通りを照らすお洒落で華やかな光を思い浮かべるかもしれないが,田舎暮らしの僕にとって街灯といえば,薄暗い道を照らす道標のような存在だ。もちろん,夜道では頼りになる存在ではあるけれども,そこに華やかさはなく,むしろ,寂しさを漂わせる存在なのである。
夏の夜,仄かに灯る街灯にぱたぱたと蛾が飛んでいる場面に出会ったりすると妙に侘しい気分になってしまう。そう言いながらも,それはノスタルジーを誘う風情だといえなくもない。
ノスタルジックな街灯といえば,傘の下で光る裸電球を思い浮かべてしまうのだけれども,よく考えてみれば,そんな裸電球の街灯が灯る場所に暮らした覚えはない。もしかしたら,映画の中などに出てくる戦後の風景が自分の記憶として刻まれてしまっただけなのかもしれない。
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