僕がまだ子供の頃,父がなぜだか西洋絵画の全集を買い込んだ。それは古典から現代に至るまでの代表的な絵画が画家別に分冊された立派なもので,我が家のリビングに鎮座することとなった。ずらりと並んだ背表紙には有名であろう画家たちの名前が記されていたが,当時の僕が知っていた名前といえば,せいぜいピカソくらいのものだった。
さて,ある時,僕は暇に任せてその中の一冊を取り出してページを開いてみた。そこには,森の中のピクニックでくつろいでいるらしき男女が描かれているのだが,髭を生やした二人の紳士は黒い服にネクタイをつけているにもかかわらず,それに寄り添う女性はなんと全裸でこちらを見ている。それを見た瞬間,生まれて初めて感じる未知の力が僕を高揚させた。
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