4.2.2 市場機会
様々な新興市場でVCSELの導入が進んでいる。ディスプレイ向けでは,4K,Retinaといった高解像度の実現,3D動画,高速フレームレート,次世代モバイルデバイス向けには3Dセンシングなどが応用例として挙げられる。
その他では,VCSELベースの時計が迅速かつ正確な位置データの提供に用いられている。特にGPSシグナルが十分に動作しない場所では有用である。VCSEL技術はボード間,チップ間など近距離の相互接続にも用いられる。
生体組織センサーは,いくつかのエミッタを搭載し,生体組織に狭帯域の光ビームを照射し,生体組織からの光波長を測定する検出器と組み合わせて分析を行う。生体組織中の測定対象のプロファイルを示すための波長,測定対象による吸収がほとんどない波長など,それぞれのエミッタは測定対象によっていくつかの異なる波長を出力する。
生体組織分析は,臨床,生物科学,医療研究分野で重要な役割を果たしている。様々な動物や植物の組織の分析にVCSEL分光器が利用されている。アルカロイド,脂質,グルコシド,各種薬剤,リグナン,タンパク質など,他のイオン化技術では検出が難しい化合物が,分光測定であれば特定可能である。
生体組織分析向けVCSEL市場は2014年には5,430万米ドル規模だったが,2020年には2億4,140万米ドルに成長すると見られている。2015年から2020年における複合年間成長率は27.6%である。
欧州市場は2014年時点では36.6%と最大のシェアを持っていたが,予測期間中にその地位をアジア太平洋市場に明け渡すと予測される。
アジア太平洋地域においてこのプロセスに利用されるVCSELの市場規模は2014年には1,440万米ドルであったが,2015年から2020年にかけて複合年間成長率33.8%で拡大し,2020年には8,330万米ドル規模に達すると予測されている。アジア地域には研究拠点が多数開設されることになっており,そういった設備で遺伝子エンジアリングや臨床分析など新しい技術への需要が生まれることが,この成長の背景となっている。